親指姫のアイデンティティ

茜琉ぴーたん

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Little me.

5

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 そんなこんなで撮影は終わり、頭の装飾は取ってもらいメイクも軽く直してスタジオ玄関へ出てくると、スケッチブックを抱えた古湊さんが黙々と鉛筆を走らせていた。

「……」

 邪魔をしては悪いかと通り過ぎようとすると、

「あ、ライムさん!なに、挨拶くらいしてよ」

と呼び止められる。

「すみません…お仕事中かと思って」

「さっきのレディーススーツさぁ、アイデアがどんどん降りて来ちゃって…今のブランドじゃあ採用されないかもしれないけど、会議で提案してみるよ」

「はぁ、頑張って下さい」

「うん、それで…これ。お土産あげる」

彼は小さなビニル袋の包みを差し出して私にくれた。

「…どうも…?」

「今日水辺の方の撮影に使ったピアス。持って帰って、是非使ってよ」

「あ、ありがとうございます」

 金古美と言うのかくすんだ金色の土台にぶら下がる葉と花弁。

 コットンパールは真鍮しんちゅうの色味に合って自然に馴染んでいる。

 あんまり普段使いできるものではなさそうだけれど頂けるものは頂こう、

「何か…目立たせたい時に使いますね」

と返せば古湊さんは可愛い顔をくしゃっとさせて笑った。
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