上 下
68 / 71
エピローグ…君のお口が大好きだ

68

しおりを挟む


 俺は年齢を差し引いても美羽ちゃんより上に立ちたがるきらいがある。

 虐げたいのではないんだ、でも言うことを聞かせたい。

 仕方なくでも従わせて、悪態をつかれても逃げさせず彼女が俺に心酔していることを確認したい。

 これは俺が宇陀川うだがわさんから学んだことなのかな、それとも持って生まれた性分なのか。

 幸いというか部下にはそんな振る舞いはしていないけれど…これが表に出始めたら社会人どころか人間として駄目だと分かってはいる。


「とりあえず、その…分担しませんか?お風呂掃除は最後に使った人がする、とか」

「オーケー。それはほぼ俺になるだろうから俺の役割にしよう。その流れで予約洗濯もセットしよう」

「あ、それ助かります!」

「(…笑った)」

 ちょっとした気遣いと話し合いで妻を楽にしてあげられるんだな、俺は最新鋭の家電を揃えることで妻孝行したつもりになっていた。

 でも当たり前に俺がやれば良かったんだ。

 もちろん使い方もマスターしているし省エネ性能や洗剤投入口の掃除の仕方だって習得している。

 それをなぜ実生活で発揮しなかったのか昨日までの俺にかつを入れてやりたいくらいだ。


「翌朝干して、仕事に行って、帰って取り込んで、料理は私がしますから」

「うん…ごめん、本当…奥さんがするもんだと思い込んでた」

「世の中、ほとんどそうだと思いますよ?でも得手えて不得手ふえてがありますからね、得意な方が進んでやりましょう」

「無理させてごめんね」

「いいえ、まぁ洗濯槽の底に手が届きにくいとか物干し竿に届かないとか、そんなレベルですよ」

「じゃあ干すのも俺がしようか」


 朝仕掛けて夜に干すのならちょうど良いかも、俺的にはナイスアイデアだと思ったのだが

「いいえ、雅樹さんはセンスが…いえ、私がやります」

と却下された。

「え?なんで?」

「ハンガーへの掛け方とか、向きとか、風の通りを考えた干し方とか…雅樹さんは下手くそです」

「…不得手ふえてだね」

「できることをやっていきましょう……ふふ、言えてスッキリしました」

 やっと彼女は食後のほっこりした顔になって、ほんのり脂の浮いたお茶を口へ運ぶ。


「(…良いねぇ)」

 茶碗に接地する間際のとんがった唇が好きだ。

 水鳥みたいにぱくぱく動いているのも可愛くて好きだ。

 思えば初めて目にした時から美羽ちゃんは食べ姿が魅力的で俺を楽しませてくれていた。

 焦って手出しをしようとは思わなかったけどそれがベストだったらしい。

 聞けばその当時は美羽ちゃんには彼氏がいたと言うのだから。

 しばらく忘れていて運良く再会できて本当にラッキー、夢に出てくるくらい惹かれていたらすぐに会いに行っただろうけど…性格を知って徐々に仲を深めていけた現状のルートが最善だったのは確かだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

フラれた女

詩織
恋愛
別の部のしかもモテまくりの男に告白を… 勿論相手にされず…

【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました

utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。 がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。

【R18】野獣おじさんは枯れていなかった

Nuit Blanche
恋愛
独身最後の砦の取手部長と呼ばれるイケオジ上司が昔は野獣だったと聞いた奥野優里奈は酒の勢いで挑発し……

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

彼氏の前でどんどんスカートがめくれていく

ヘロディア
恋愛
初めて彼氏をデートに誘った主人公。衣装もバッチリ、メイクもバッチリとしたところだったが、彼女を屈辱的な出来事が襲うー

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...