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10…やべぇ、食いたい
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しおりを挟むそれから車で走ること20分。
複合型商業施設に着いたら私たちは腹ごなしとばかりにあちこちを歩き回った。
これから梅雨シーズンを迎えるとあって雑貨屋さんにはカラフルな雨具が並べられ、車移動であまり活躍の機会が少ない雨傘も買ってみようかと思うほど可愛いデザインのものが多かった。
「可愛い美羽ちゃんにそれ買ってあげようか?」
「…児童誘拐犯みたいなこと言わないで下さい」
「失礼な」
私にお金を使いたいのか何か与えたいのか。
夕飯も共にするのだからそこを奢ってもらえば彼も満足するだろうか。
「雅樹さん、なら晩ごはん、奢って下さい」
「お、良いの?」
「お金出す側が喜ぶって変なの」
「ぷふっ、そうだね…」
気を良くした雅樹さんはここから私の肩を抱いてぐっと引き寄せるように歩き始める。
所有権まで明け渡したつもりは無いのだがあまりに嬉しそうなので指摘するのも野暮かと思い諦める。
「(…持ち物みたい、何て言うんだろ、帯同?)」
フロアをぐるりと巡って喫茶店のショーケースに私たちの姿が映る。
二の腕をふにふにと揉む手つきがいやらしい、するする腰へ降りて来て肉を摘む指もいやらしい。
「あの、変なとこ触らないで下さい」
「変かな、この服ふわふわして可愛い。あれだけ食べてもお腹が目立たないね」
「まぁそれを狙ってたので」
「お腹、どれだけ膨らんだんだろ」
これは誘っているのだろうか、真っ昼間だけどそんなことがあるのだろうか。
隣の雅樹さんを見上げれば紅潮した白い肌と流し目が色っぽくてやはりいやらしかった。
「あの」
「美羽ちゃん、二人きりに…なれるとこ、行かない?」
「あわわ」
「お腹、空いたんだ」
「えっ?」
さっきの今でそれは無いだろう、私ならまだしも雅樹さんは少食だしおやつにもまだ早い。
文脈と態度のギャップに困惑する私を雅樹さんは通路の壁際まで押しやって、
「食べたい、美羽ちゃん」
と大きな語弊をもって誘惑してきた。
「えぇ?」
「食べたい、性的な意味…今日が無理なら、いつが良いか教えて、」
時限式の媚薬でも盛っていたかのようにハァハァし始めた雅樹さんは、とろんとした瞳で私を貼り付けて唇を奪った。
そこそこの人通りがあるというのにバカップルばりの暴挙に出る。
「…ムぐ…ちょ、雅樹さん、人前、」
「ハァ…昼メシの時から堪んなかった…美羽ちゃん、食いたい」
「しょ、食人はんたーい、」
「んなこと言わないで」
「せめて車に戻ってから、ね、」
通路を歩く人が訝しげな目でこちらを窺う。
盛りのついた高校生でもこんなことはしないだろうからみっともない。
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