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7…いろいろ食わせたい

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「なんて言うか…巻き込まれ、風評被害?」

「ごめん…でもそう聞かされてたら先入観で穿うがった見方しちゃったんだよ…あー…ごめん、とりあえず帰ろう」

2回目の青信号に足を踏み出した栄さんはサクサクとムラタ側に渡って緩い傾斜の歩道を下って行く。

 小走りで追い掛けるとその足音が可笑おかしかったのか栄さんは肩を震わせて地面を見た後、「あー!」と序盤は強く最後には弱々しく叫び、整えた髪をガシガシ掻いてセットを崩した。


 私が何と言おうが宇陀川の呪縛は絶対なのか振り払えないんだ。

 きっと今現在私がされているよりももっとキツい扱いをされてきたから恐怖に支配されて私の言葉が信じられないのだろう。

「(と言っても、宇陀川と何の関係も無いしなー…証明のしようが無い…)」

 栄さんは告白まがいのことをしてくれたがその先の希望とか私の答えを求めていない様子、「私も好きです」と伝えるタイミングを逃してしまい言葉に詰まる。

 言ったところで宇陀川の影を払拭できないと気持ちの良い交際はできそうにないし、奴とグルになって栄さんをめているなんて疑われてはいよいよ私も挽回を諦めてしまうかもしれない。

 度々の逢瀬で私と彼が見ていた景色は違ったのだな、彼は常に私の後ろに宇陀川を重ねていた。


 ムラタの敷地に入り平面駐車場を奥へ奥へ、栄さんは勝手を知った風に従業員駐車場へと迷い無く進んで行く。

 私の車へ辿り着いたら今夜はお開きだろう。

 疑念を残したまま別れなければならないのが悔しいし「そんなの関係無い!」と構わず奪ってくれない栄さんの気持ちも怪しく思える。

「…車、どれ?」

「あっちの軽です…栄さん、」

「なに」


 誰も居ない駐車場、従業員しか停めないのだから不要だろうと消された外灯の下で私は立ち止まった。

「私は今日も、前回も、栄さんと食事ができて嬉しかったです」

「…そう?」

「はい。その…わ、私、栄さんに会いに…オーサキに行ったので」

「…プライス確認じゃなくて?」

「退勤後にわざわざそんなことしません…会えたら良いなって…あわよくばお話なんかできたらなって…思ってました。初めて競合調査に行った時から…気になってました」


 どうかこれは信じて欲しい。

 私を栄さんへ差し向けたのは宇陀川だけど栄さんと接している時の私の心は奴に操作されてなどない。

 むしろ作為的に笑顔を作る栄さんの方が何者かに操られているかのようだった。

「最初は…能面みたいに貼り付いた笑顔が怖かったんです」

と告げると彼はその場にしゃがみ込んで「えぇ~」と情けない声を吐いた。
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