あなたでお腹いっぱいです…能面イケメンは私のコレがお好きみたい

６…これもお食べ

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「…宇陀川さんは…その、栄さんを虐めたくて連絡して来るんですかね」

「だろうね、気に入らないんじゃないかな…俺が出世したから。あの人がオーサキでなれなかった主任に俺が就任したから…やっかみなのかな。ムラタのフロア長と同格だから俺が追い付いた形だね…俺の方が５つは歳下だから余計に悔しいのかも」

「ほうほう…あ、私、この前宇陀川さんに栄さんのネクタイの色を聞かれましたね。青って答えたら安心した感じでした」

「ふは…俺が副店長に上がってないか確認した訳か…そういうこと、俺には直接は聞いてこないんだよな…たまーに呼び出されてメシ奢って貰って…付かず離れずなんだけど、美羽みわちゃんがうちオーサキに競合調査に来る前にさ、連絡があったんだよ」

「え、調査対象のライバル相手に？」

「うん。『これから競合調査にチビが行くから、よろしくな』って」

　そこで私を何故絡めるんだ。

　そしてチビって大抵の男性から見れば私はチビな訳だが…またハラスメントのメーターが奴の有責をカウントする。

「あんにゃろ…」

「…あと、『俺が可愛がってる奴だから、虐めんなよ』とも言ってた」

「は？…………あのー、えー…？」


　ははぁ、なるほどそれだと私がまるで奴の愛人みたいに聞こえますねー…思考は一旦ストップして栄さんの台詞せりふを反芻はんすうすること２周３周。

　不快感を眉間に表してミルクを啜すすった。

　厳密に言えば宇陀川も私も独身なので愛人ではないのだけれど、『表立って公表はしないけど沢山居る遊び女のうちの比較的本腰を入れているひとり』みたいな印象を受ける言い回しだ。

「俺はまんまと信じたよ、だから美羽ちゃんが売り場に現れた時に正直『趣味の悪い女だな』って思った」

「……あのー…何から訂正すれば…」

「けどなんつーか鈍どん臭いというか垢抜けないというか…あの人の好みじゃない気がしたんだよ。だからより本気なのかとも思ったけど…」

「（酷くない？）」


　彼はきっと私に気を許してくれたのだ。

　もしくはこれまでが警戒体制にあっただけでこの歯に衣着せぬ物言いが本来の彼の姿なのか。

　能面が剥がれて柔らかくなったと思ったらエグい距離の詰め方をしてくるな。

　こういうの宇陀川ナイズドされてる気もしないでもないがそうじゃなかった場合が恐いので聞かないでおく。


「そうっすか…」

「…前にさ、まぁ若い時に好みのタイプとか話したことがあったから…わざと俺に美羽ちゃんを当てて来たんじゃないかなって…思ってんだ」

「コノミ」

「俺、いっぱい食べる子好きなんだよ…フットサルの打ち上げで美羽ちゃんを見てたの、勘付かれてたのかもね」

「へ、ぇ、」

「それから競合の日になりゃ電話が来る…『俺の女がこれから行くからよ』とか『平凡だけどアッチは凄い』とか」

「……」

情報過多で頭がパンクしそうだ。

　とりあえず私は栄さんの中では『地味でモサいチビだけど宇陀川さんが一目置いて可愛がってる床とこ上手』みたいな最悪の印象だった訳だ。

　これは出るとこ出たら勝てるんじゃね？と思う反面、自分の悪評を証拠集めとはいえ確認せねばならないのはキツいなぁと気が引ける。