仰せのままに、歩夢さま…可愛い貴女に愛の指導を

茜琉ぴーたん

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番外編・2

お手伝いさんは見てた・5

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 宴の後のこと。

歩夢あゆむお嬢さま、一段とお綺麗だったわね」

「本当にね、立派になられて」

 私たち使用人は口々に結婚披露宴の感想を言い合い、歩夢さまの部屋を片付けていた。

 旦那さまと奥さまは披露宴の流れのまま会社関連の人たちの夕食会に出るそうで、我々だけひと足先に二階堂にかいどう邸へ戻って来ている。


「時の流れって早いわね」

「まったくよ」

 お馬鹿で活発だけが取り柄だった歩夢さまが、殿方に寄り添ってしなを作って。

 慎ましやかにしとやかに、ドレスで歩いていた。

 我々も客の立場で参列したのだが、コケやしないかこぼしやしないかと気が気ではなかった。

 いつまで経っても歩夢さまは歩夢さまで、お可愛らしい娘のような存在なのだ。


「ベッドはひとつで良いのかしら」

「んー…家が出来たら新しいのを買うんでしょ」

 敷地内には新婚夫婦の家を建設中だ。

 完成するまでは数ヶ月間、2人はこの歩夢さまの部屋にて寝泊まりをすることになる。

 我々はこれまで、旦那さまや奥さまや他の男性使用人に2人の営みがバレないようにフォローしてきた。

 廊下に立って付近に人が立ち入らないよう計らったし、いかがわしいゴミが人目に触れないようコッソリ回収などもしていた。

 しかしこれからはそこまで介入は出来ないだろう。

「これからは堂々と夜にシちゃうのかしら…床板がギシギシ言うから、静かな夜だと響いて1階の旦那さまたちの寝室に聞こえちゃうんじゃない?」

「あるわね…さすがに私たちじゃ隠せないわ」

「本人たちも気付くでしょうけど…気まずいわよね」

「我慢するんじゃない?それかホテルで済ませて来るとか」

「それが楽で良いわ~」


 歩夢さまの季節外れの洋服を納戸なんどへと移して、空いたスペースにたちばなさんの私物を入れる。

 彼は荷物が驚くほどに少なくて、業者も使わずに引越しを済ませてしまったらしい。

 触って構わないと言われているので洋服はクローゼットへ収めて、書籍は既存の本棚にスペースを作り立てた。

 仕事関連と書かれた箱はそのまま歩夢さまの机へ、これは共用にするみたいだ。

「荷解きも任せてくれるなんて、プライバシーとか気にならないのかしら」

「潔癖じゃないんでしょ。見られて困る物が無いってことね、良いんじゃない?」

「誠実なんだか何なんだか…あ、下着…これは見なかったことにしましょう」

「開封しちゃったから見たことはバレるわよ。適当に収めてあげれば良いんじゃない……あら?これは」

筆記用具を詰めた箱を開くと、可愛らしいクッキー缶が目に付いた。

 振るとカサカサ音がして、紙か何かが入っていることが分かる。
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