上 下
49 / 117
7

49

しおりを挟む

「それだけですか?ならもうお暇しますね」

 ヨコハマの試合の方が俺にとっては関心事だ。

 これから帰っても充分楽しめるだろう。

 このためだけにスーツに着替えたのが馬鹿馬鹿しくていけない、ため息を吐きつつ中腰体勢から立ち上がろうとしたその時。

「橘、もう1回……指導して、」

情けなく恥辱にまみれた面持ちで歩夢嬢は俺の手を掴んだ。


「歩夢さま」

「分からないの…また、比較したいの」

「…昨日お教えしたばかりでしょう」

 やれやれ早速のおかわりか、光栄だが有り難みが無い。

 そういうテンションじゃないんだ、昼間だしそこまでムラムラしてる訳でもない。

「橘が上手だから、高梁くんとが物足りなくなっちゃったのかもしれないし」

「なら、尚更しない方が良いのでは」

「確かめたいの…私の、自分の感覚を」


 確かめたいって、俺を好きな訳でもなかろうに。

 高梁くんへの気持ちがあるかどうかを調べるために俺に体を差し出すなんて馬鹿過ぎる。

「……はぁ、」

 そうか、好きだけど気持ち良くない高梁くんと、好きでもないのに気持ち良い俺とのセックスを比較するのか。

 掴まれた手から歩夢嬢の体温と緊張が伝わって来る。

 探究心か、それとも欲求か…いずれにしても、俺は主人の希望に添うだけだ。


「歩夢さま、指示を頂ければ私はそのように致しますよ」

ゆらり立ち上がり、いまだ寝そべる彼女を見下ろす。

 歩夢嬢の表情は僅かにだが晴れやかになり、しかしすぐにもじもじと目線は俺から逸らされた。

「…どうしました?」

「た、橘…わ、私を…抱きなさい…」

「承知致しました…歩夢さま、昨日のアレ、お持ちですか」

「アレって?」

「…避妊具、ですよ」

 ニヒルに笑めば歩夢嬢は「あぁっ」と起き上がり、通学に使っているバッグに飛び付いて底を漁る。

「そんな所に?」

「部屋に置いておけないじゃない…はい、」

「恐れ入ります」

 不用意に持ち出して高梁くんに見つかったらどうするのだろう。

 明らかにサイズが違うのだから瞬時にバレるだろうに。

 それとも送迎の空いた時間で俺とのハプニングに備えているのか。

 まぁ無いだろうが部屋に隠す方が安全な気はする。


「歩夢さま、体勢はいかが致しましょう」

「…う、後ろからにして…」

そう言うと、歩夢嬢は再びベッドへ登って俺に背中を向け正座した。

「後背位ですね、承知しました…高梁さんと、こうしたのですか?」

「い、良いじゃない…何でも…」

 そこまで比較したいなら希望に沿ってやろうじゃないか。

 無防備な背中を蔑みの目で睨んでちぃっとスラックスのファスナーを下ろす。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...