仰せのままに、歩夢さま…可愛い貴女に愛の指導を

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
55 / 117
番外編・1

お手伝いさんは見てた・3

しおりを挟む

 そんなこんなで時は過ぎて、歩夢さまは無事短大生になられた。

 それもこれも橘さんが根気強く教え込んでくれたおかげ、私たちも合格祝いでは盛り上がったものだ。

 そして彼はただの家庭教師から付き人に昇格、平日のほとんどを歩夢さまに捧げる生活となった。

 彼はいまだに二階のお手洗いで自慰をしているのだろう。

 彼が使った直後は特有の匂いがする。

 本人は気付かないのが滑稽こっけい、まぁ指摘したところで双方恥ずかしい思いをするのだから黙っておいた。


 そうこうしていて半年ほど経った頃。

 橘さんが訪ねて来るにもかかわらず、お手洗いのあの匂いの発生頻度が下がった。

 私たちもそればかり気にしている訳ではないのだけれど、「恋人でもできたのかしら」「枯れたのかしら」なんてヒソヒソしたものだ。

「朝からここに来て学校に送って、それから出社して仕事、学校が終わる頃に迎えに行って、お稽古に送って、ここに送って復習と課題を見て、また会社戻って仕事して……恋人なんてできるかしら」

「単純に、叶わぬ恋を諦めたら性欲も失せちゃったんじゃないの?」

「でもたまに匂うのよ」

「我慢できるようになったのかしら」


 そして「いい人ができたの?」なんて世間話程度に聞いてみようかしら、と言っていた数日後…私は聞いてしまった。

 押し殺した悲鳴みたいな歩夢さまの喘ぎ声と、水気を帯びた肉が打ち合う音を。

 盗み聞こうなんて思ってはいなかったのだけど、廊下の端の電球が切れかけているからと交換に上がった時に歩夢さまの部屋から漏れ聞こえてきたのだ。

 勉強の邪魔をしてはいけないと時間をかけて静かに動いたからこちらに勘付かなかったのだろう。


「……!」

 息を潜めて床板がきしまぬようゆっくりと通過して、本来の職務を気もそぞろになりながら片付けた。

 それからまたゆっくりと扉の前を忍び通れば、クライマックスが近いのか歩夢さまはなんとも甘い声で橘さんの名を繰り返していた。

「(ふたりは…愛し合ってる…?)」


 そういえば、数日前に歩夢さまがやけに大きな声で「橘ぁ!」と叫んだことがあった。

 何事かと急いで駆け付ければ、レポートの指導に反発して叫んだのだと橘さんが苦笑しつつ教えてくれたのだが…あれもそうだったのかもしれない。

 さて問題だ。

 隠れて自慰行為をするくらいは許していたが、主に手を出しているとなれば橘さんの処分は免れないだろう。

 進学させた功労者とはいえ、愛娘のこととなれば旦那さまもお怒りになるだろうし会社もクビになるかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!? 『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』 小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。 ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。 しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。 彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!? 過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。 *導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。 <表紙イラスト> 男女:わかめサロンパス様 背景:アート宇都宮様

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。 「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」 「別に誰も気にしませんよ?」 「いや俺が気にする」 ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。 ※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。

処理中です...