仰せのままに、歩夢さま…可愛い貴女に愛の指導を

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　その後も数人彼女はできたが、あの先輩ほどに燃え上がれなくて短期で終了した。

　自分で言うのもなんだが、俺は学力はあるし顔もそこそこ良いのでコンパなどすればお持ち帰りすることなど造作もない。

　しかしどうも俺に全てを預けてくれる女というものに有り難みを感じないというか…もったいなく重たく感じてしまうのだ。

　先輩の亡霊にいまだに取り憑かれていて、彼女ほど魅力的な女性には会ったことがない。


　けれど残念、俺の記憶の中の先輩の顔貌かおかたちはもうぼんやり朧おぼろげだ。

　それなのに、翻弄されたあの期間は何より充実した青春時代であったとこうして回想できる。


「（そうか…寝取られってやつか…）」

　それが俺の癖へきというやつなのだろう。

　人のものに手を付ける悪癖、しかし先輩に関しては俺は自分から手を出した訳ではない。

　あくまで向こうから誘われて、請われて、だ。

　率先して抱いた訳ではない…そして今回の歩夢嬢についても同様だ。


　リア充高梁くんの彼女・歩夢嬢を寝取ることで彼より上に立ったつもりになれる。

　歩夢嬢とはハグしかしてないが、彼女をオカズに抜いた事実だけで俺は随分と興奮出来るということが分かっている。

　恋愛指南のふりして大人のセックスを教え込んでやろうか、そうすれば歩夢嬢は高梁くんとのそれにますます不満を募らせることだろう。


　愉快だな、不憫だな、そんなことを考えていると歩夢嬢が不審そうに俺の顔を覗いた。

「橘…？」

「…はい？」

「どしたの、ニヤニヤして」

「……いえ、高梁くんと…お付き合いは続けるんでしょう？」

「んー…気持ちがついて行かないのに彼女でいるのもな…」


　甘酸っぱい気持ちに汚れた心が洗われるようだ。

　しかし

「まだまだこれからじゃないですか…応援しますよ」

と白々しい笑顔を足して返す。

「そう？」

「えぇ、何事も継続ですよ」

「そっか……うん、頑張る」


　その調子で俺に美味いオカズを提供してくれよ…ガキの色恋沙汰に興味の無い俺は、そんな具合に歩夢嬢の良き理解者としての地位を登り詰めて行くのであった。



つづく