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しおりを挟む歩夢嬢はガキだ。
色気も身体もそこそこだが恋愛対象にはなり得ない。
道義的にもそうだし、感情的にもそうなのだ。
では何故俺は興奮して人様の家のトイレで自慰をしてしまっているのか。
もしかすると彼女ではなく彼氏の方への思いが強いのか。
とはいえ俺はプリントシールでしか見たことのない高梁くんに焦がれている訳ではない。
これはやはり対抗心で燃え上がっているのだ。
俺は今で言う『リア充』みたいな学生生活ではなかったように思う。
友人には恵まれたし虐められるなんてことも無かったが…なんというか目立つ奴らからは『冴えない男』という扱いを受けていた。
勉強も出来たし人当たりも悪くないと自負しているが、若い頃は周りから主に外見で評価されがちだ。
着崩すことない校則通りの制服や頭髪は、派手な奴から見れば地味でつまらなかったのだろう。
さて、高梁くんは性格は知らないがきっとそのリア充側の人間だ。
俺は有名大学も出たし安定した職に就けた、しかし老いたのか未来ある若者が妬ましくてイライラする。
しかも俺を馬鹿にしていたクラスの奴らみたいなキラキラの高梁くん、歩夢嬢みたいな可愛い彼女をゲットした高梁くん。
彼は歩夢嬢と別れてもこの先手堅い企業に就職して上手いこと幸せな人生を送るに違いない。
だから学生時代の彼女が『セックスに満足してない』くらいの汚点があってもトータルでマイナスにはならないだろう。
俺からすれば、順風満帆な人生なのに「恋人が他の男にセックスの愚痴をこぼしている」高梁くんの状況は最高に愉快に思えてならない。
人の失敗を見て笑うような大人になってしまってうちの親は哀しむだろう。
でも俺と歩夢嬢でそんな秘密を共有しているという事実はとんでもない優越感を生む。
彼女が陰で性生活の悩みを一介の家庭教師にバラしてハグまでした。
弱みを握ったことに「してやったり」と感じたのだ。
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