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「避妊は…してたつもりだけど」

「うん、その…飲む時間がズレた日とかあって、そういうので…可能性が高くなってたのかも…検査薬は買ってるの、遅れてるの気付いた日に。生理予定日から1週間で正しい結果判定が出来るらしいの…だから、しなきゃなんだけど…恐くて」

「ならこの1週間不安だったろ。早く言えば良いのに…ミサ、俺はミサの選択を支持するよ」

「うん…もし、そうだったら…処置してもらうから」

「…あぁ」


 子供が要らないというのは俺たち共通の意見なのだが、特にミサは「産みたくない」と意志を表明している。

 彼女はいわゆる毒親育ちで、正しい子育てへの憧れも無ければ理解も持つ気が無いのだ。

 さらに言えばミサはメンタルの上昇と下降が激しい。

 メンヘラと呼ぶには重い診断歴もあり、それは同棲を始める前に打ち明けられた。

 なるほど気まぐれだったり一貫性の無い行動があったりと、これまでの不思議な点が線になって繋がる感覚がした。

 SMで他害衝動を発散していたり、支配されることで自意識を保っていたり。

 一緒に住み始めて不都合は無いし、安定しているから問題は無い。

 ちなみに、俺に無理やり開けさせたあのピアス穴だって、もう塞がってしまっている。

 俺に抱かれることで満たされているから、穴が必要無くなったらしい。
 

「ごめんね、でも子供は無理だから。まともに育ててもらってないから、私もまともな子育て出来ない」

「良いよ」

「病んだりするし、突発的な行動もするし。成昭さんとだったら、って何度も考えたんだけど……やっぱビジョンが見えないんだよね」

「分かったって」

「もし、子供が欲しいんだったら他の女に」

「ミサ、」

俺は包丁を置いて、ミサの前にしゃがみ込む。

 彼女の方が背が高いが、こうなれば関係無い。

「ミサ、俺に『産んでくれ』って言わせてぇの?」

「…違う、でも、もし」

「産んでみたらいけた、って話もあるけどよ、産んでみて『やっぱ無理、育てられない』じゃ無責任過ぎるだろ。俺が育てても良いけどよ、ミサが辛いだろ。俺はミサの選択を支持する、以上だ」


 信念があっても、たまに揺らぐこともあるのだろう。

 挑戦してみたら案外いけたとか、どうにかなったとか、そんな数年後の自分を想像してみたり。

 でもそこまで走り抜くのが大変なんだ。

 ミサの親がそこを蔑ろにしたんだから、自分も踏襲するんじゃないかと危惧するのも仕方ない。
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