わかりあえない、わかれたい・6

茜琉ぴーたん

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趣味が理解できない

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 おかしいなと感じたのは、既に体を交えた後だった。

 熱気冷めやらぬ彼が、のそのそとベッドから降りてバッグから手帳を取り出したのだ。

 体には汗どころか私の体液だって付いていて、局部には被せがぶら下がっている。


 私は「ピロートークとかしないのかな?」なんて考えつつ彼を目で追って、手帳を見て「うん?」と目を凝らした。

 ハードカバーのしっかりとした手帳は使い込まれていて、角が擦れて台紙が覗いている。

 彼はベッドへ戻って雑に被せを外し、自身の太ももに置いた。


「…?あの、」

「ちょっと待ってね、すぐ書いちゃわないと忘れるから」

「何を…」

「レポートだよ、今のセックスの」


 引くというか、言葉が耳から脳を回避して逃げたがっている。

 理解したくない、詳しく知りたくない。


「え、何の…え?」

「セックスを、事細かに記録しとくんだ。趣味みたいなものだね」

「え、え、」

「えーと、結構出たね…今日は0.02ミリ使用、プレイ時間は1時間くらいか」

彼はくたくたの避妊具を持ち上げて、量を見てまた下ろす。

 そして本日のセックスの内容を手帳にカリカリ書き込んでいく。

 恐る恐る覗くと、ページの上部には私の名前と特徴が既に書かれていた。

「…ぇ…」

 フルネーム、顔写真、社名、鎮まりかけていた心臓がだんだんと早打ちになる。

 交際した女性の人数を表しているのか、厚み1センチはありそうな手帳のページは中程が開いてある。

 記憶しておくのは自由だけどせめて家でやって欲しい、このまま隣にいるのがとんでもなく恐い。
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