自己評価低めの彼女は俺の自信を爆上げしてくれる。

茜琉ぴーたん

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3月

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「ストレートに『太ってる』って言われるよりはマシ…、骨格はどうにもなんないし…そこをいじるのはナンセンスですよね」

「しやで…チカちゃんは適度なムチムチ感がええんや」

「ムチムチって…そんなに?」

ナイスバディとは言い難いが見苦しくはないはずと思っていた知佳は不本意な称し方をされていささか表情が険しくなる。

 そんな彼女が運んで来たマグカップを千早は受け取り、

「ちゃう、褒めてんねん、ガリガリよりワシは好き、」

と弁明に必死になった。

「…人を褒めるときにその他をけなすのは良くない」

「へ、しやったらなんて?」

「だから…『私が』を強調すればいいじゃないですか」

知佳は千早の隣へ腰を下ろし、リモコンをいじって朝の日課であるテレビ番組表チェックを始める。

 録画するかリアルタイムで視聴するか、日々の娯楽の一端を担うバラエティ番組は必ずチェックするようにしているのだ。

「ほー、」

 ポチポチとボタンを押す知佳の横顔を見遣って千早は

「チカちゃんのおっぱいが好き。チカちゃんの太ももが好き。…こういうこと?」

とお伺いを立てれば、

「そうだけどなんか嫌…」

と彼女は男へ向き直って眉をしかめた。

「ひひっ…まぁそう言わんと、ん♡」

千早は知佳の肩へ腕を回して体を引き寄せ、慣れた様子で口付ける。

 手を使わず顔をグイグイと迫らせて唇を捕まえる、知佳が俯こうがそっぽを向こうが潜って回り込んで獲物を仕留める。

 彼女は本人には言えないが、千早を蛇の様だと思ってしまうことがなかなかにあった。


「千早さん、なんか……オスみが増してる…」

「オスミ?男っぽいってこと?そらオトコやし…自信ついたし?…何でやと思う?何でって聞いてみて?」

「………なんで?」

そのふざけて笑う口元も好き、目も好き。

 反対に「むぅ」と口をへの字に曲げた知佳は、おそらく聞くまで引き下がらないだろう男へしぶしぶ問いかけてやった。

「知りたい?彼女抱いたったからよ、一人前よ、ひひ♡」

「あっそ…」

そんなことは知っている。

 千早は先日交際満3ヶ月を無事に迎え、公約通り知佳と初セックスを成し遂げたばかりなのである。



 その日は早番で仕事を終えた知佳の自宅で待ち合わせ、乗り合わせてホテルへ行くという遠足のような計画だった。

 翌日は揃って休日だしそれが良かろうと千早が言い出したのだ。

 彼の誘い文句は、

「初めてなんやから…ちゃんとしようや…ホテル探しとくから…」

で、どうやら日常と性的な空気を混在させたくないような意図があったらしい。

 だらだらセックスをして休日を過ごすのではなく、休む時は休む、遊ぶ時は遊ぶ、そういう雰囲気になったらガッツリと…が理想だそうだ。

 しかしキスハグは挨拶がわりだし下ネタは日頃から聞いているし、知佳はその彼の主張に「ふーん」としか返さなかった。

 かくして順調に二人は体を交えて親密度も増し、今日のようにお家デートになっても昼間の千早は無闇にさかったりはしないのだ。
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