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おまけ
ぼちぼち
しおりを挟むとある冬の何でもない夜のこと。
「ほな、お願いしよかな」
千早はベッドに座る知佳の前に膝立ちになり、慣れ親しんだムスコを持ち上げてニタと笑った。
「…上手に出来るか…分かりませんよ」
「上手い下手ちゃうのよ、してくれんのが嬉しいの、ほれ」
「……」
知佳はむぐぅと結んでいた口を解いて、男の鋒に吐息を吹き掛ける。
千早がさせようとしているのは言わずもがなの口淫で、しっかり綺麗にしてくれているし昼間から予告して心の準備をさせてもらっていたしでもうここに来て「できません」とは言えなかった。
「おわ♡」
「……」
これの何が嬉しいんだろう、知佳はなるべく理性を飛ばして臨もうと思ったのだがどうしてもモノを目の前にすると興奮が冷めてスンと冷静になってしまう。
もちろん単純に恥ずかしいし少し汚いとも思っているし、けれど恍惚の表情を浮かべて後ろ頭を撫でる夫がきゅんと心に刺さるので期待に応えたいとも思う。
舌先を付けるだけでぞわぞわ千早の膝が震える、おそらく叫びたいくらい感じているのだろう四白眼をさらに見開いて歯を食いしばって。
その形相はまるで鬼か悪魔と良い勝負だった。
「はむ」
「おわッ…あ、チカちゃん…あー、あ、そない咥えんでええよ、吐いてまう、あ、あー」
「(悦んでるなぁ…)」
「あー、こっれは……あ、たまらん、チカちゃん…やべ、ここでイきてぇ、」
ここでイくのは相当なテクニックが無いと難しいだろう、だって千早は途中で小休憩を取らねば疲労で腰が振れなくなるほどに遅漏なのだ。
当然そんな技術も自信も無い知佳は、模範的でいかにもな動きで分かりやすく興奮させてしまおうと考えていた。
昇天まではさせられなくても一応「した」という事実と体験があれば千早は満足するだろうし、これはあくまでセックスの前哨戦であってクライマックスではない。
「(痛く、ないかな…あご、疲れた…)」
「チカちゃん、あ、歯ぁが、あ、」
「ぷふ……あ、当たってますか?すみません!」
「ちゃう、チカちゃんのかいらしい八重歯な、あれで撫でられてる思うたら堪らんかってん」
「……はぁ」
刺さったわけではないのだな、一度口を離すともう自分からはパクつけない知佳は前屈みをやめて腰を落ち着けた。
見上げれは千早は少し残念そうで、でもすぐにふにゃっと柔らかい笑顔になって
「おおきにね、チカちゃん…気持ち悪いことないか?」
と知佳の唇の唾液を拭う。
「ん…大丈夫です」
「ん、ほな寝といて、ゴム着けるから」
「はぁい…」
ここからが本番だ、知佳は夫の名残を唾で流しつつベッドへと横たわった。
今夜も長いんだろうな、頑張るんだろうな。
自分が研いであげたソレで自分を責めるのか…装備を待つ間のお澄まし感というか手持ち無沙汰な感じがどうも気恥ずかしい。
脚を掴まれれば「いやぁ」と口をついて出るだろうが便宜上であり儀礼的なもので、もう当たり前に身体に染み付いた千早の骨張った手の感触に嫌気など皆無だ。
ウェルカムでも恥ずかしい、でも遠慮されたくはない。
せめてこのインターバルが短ければな…なんて思ったりするがそれはまだ先のことだろうか。
「お待たせ…ん、行くで、はい、くぱー」
「くぱー…」
「ん、ええ子して待ってたな、ん、ん♡」
「ふワぁ」
何度受け入れたって慣れない、抜かれれば感覚がリセットされてその都度新鮮な快感をもたらしてくれる。
奥へ、手前へ、底へ、天井へ、体を捻り様々なスポットを提供してしまうのはサービスではなく天然の反応だ。
「チィカちゃん、ん、あー、入籍して1年経ったしなぁ、ぼちぼち、あれ、せんとなぁ?んッ」
「な、にッ、アっ♡」
「子作り、なぁ、」
「あ、ぼち、ぼち、」
剥き身でセックスすれば容易く成せるのだろうか、そう簡単にはいかないだろうか。
この数ヶ月同僚の結婚や出産が立て続けにあり触発されんこともない、自らの親たる素養は怪しいが千早とならば上手くやっていけそうな気がする。
「ん♡チカちゃん♡どやろ?な♡」
「あふ、今度、から、に、しま、しょうか、」
「あ、ええの?そりゃ頑張らなね」
「はい、ゔあ♡」
その後しばらく盛った千早は、ぼそり「頑張んのはチカちゃんやで」と不穏な口添えをして、スキン越しに射精して闘いを終えた。
「(今日も長かった……ん?私が頑張るの…?なんで?…あ、産む時痛いからか…)」
「ハラ、ぱんぱんになるやろね、ひひっ」
「そりゃ大きくなるでしょうけど」
「ちゃう、オ×コのナカいっぱいになんで、ってこと」
「…………そんなに、出さなくていい…」
子供もいいがその前に子作りを楽しまねばね、次の日から本格的に始まったそれが見事成るのはもうしばらく先だが…それまで千早はたっぷりしっかりと知佳へ愛を注ぐのだった。
おしまい
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