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9月(最終章)
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しおりを挟む「早い旅やったね。名物くらい食べたら良かったかな」
「んー…名産はこれといって無いから…帰って何か食べましょう」
半日も経たず兵庫へ帰還、知佳は駅前のパーキングで駐車料金の精算をする。
慣れ親しんだ街、まずまずの都会の喧騒。
駅前通りから呑み屋街方面をチラと窺った千早は車に乗り込むと運転席の知佳の脇腹を指で突いた。
「きゃ、なに?」
「チカちゃん、ホテル行こ、エッチしたい。今抱きたいねん、ホテル行こ、家でもええけど…チカちゃん声出ると思うから…行こ、な?」
予定外のことを聞かされれば知佳はぶわと赤面して、しかし乱れさせる予告に怖気付いて
「何する気…」
とジト目になる。
「ん、自信とか自己評価とか自己肯定感、爆上げさせたい」
「エ、エッチで上がんない、」
「上がるよ、ええ女なんやから…ほらバーが上がってまうよ、車出そ、行こ、」
「ど…どこにする…?」
急かされると知佳は弱いのだ。
車はゆっくりと車道へ出て、千早の誘導により近隣のいかにもなラブホテルへと吸い込まれて行った。
部屋を選び専用スペースへ車を入れると、千早は
「なぁ、さっき着てたワンピース、あれも持って行こ」
と知佳の着替えが入った旅行鞄を勝手に開けて手提げ袋を取り出す。
「え、なんで」
「可愛かったもん、お姫様みたいやったよ」
「それは褒め方が乱暴……それなら…諒介さんも…スーツ…」
「そう?良かった?」
「はい…新鮮で…かっこ良かったから…」
「ひひっ」
スーツギャルに続いてコスプレチックなことも許容されつつあるな、千早はしめしめとカバーに包まれたスーツを取り出して小脇に抱え入り口へと歩いた。
「なぁ、優しする?それとも激しシてええ?」
「へ…」
てっきり甘やかして可愛がってくれるのかと思いきや、千早がそんな選択肢を出すものだから専用階段を上がる知佳の脚がピタと止まってしまう。
だいたいいつも優しくて激しいのだからどちらかに全振りするというのが想像つかない、知佳は「早く上がれ」と尻を叩かれて答えられぬまま部屋へと進んだ。
・
「キレイな…ところ…あ、畳だ」
千早の以前のアパートよりもしっかりと和風な設え、小上がりの畳スペースや座卓に座椅子はシックでお洒落だった。
「ん…ほな着替えよか」
「え、お風呂、」
「要らん、そのまま」
ギラギラと目を輝かせる千早が知佳のTシャツの裾に早速手を掛けて脱がそうとすれば、
「いやだ、あの、色々っ…」
と汗や体臭を気にする彼女は当然のように逃げ惑う。
「ムダ毛とか?ええよ」
「それもっ、あの、確認してないっ…本当、あ、」
「何見たって幻滅せぇへん。見して」
「やッ…やだ、」
隅へ追い詰められた困り顔の知佳は簡単に裾を捲られて、今日の嫌な汗を吸った肌着と下着を拝まれる。
「下着は揃えてんのかな?下も見して」
「…揃えてる…たまに誘われたりするから…でも、」
ろくに抵抗もできず知佳は下着だけになり、しゃがみ込んで太もも周辺の細い毛を目に留めた千早に
「お、脚は直前に剃るタイプなんやな?」
と指摘されて恥ずかしさよりも怒りが湧いた。
「…ほんっとう…やだ…」
「生きてる証よ、女の子やって生えるわそりゃ…」
「それを見せないのが女の子の努力でしょうよ、もォ…」
ぬかったな、誘われても身支度をする時間はいつも与えられていたために外から見える所しか手入れをしてなかったのだ。
つまりはワンピースの丈より上の部分の脚は産毛やら伸びたムダ毛やらがそれなりに生えている。
ギリギリと歯を鳴らす知佳をベッドへエスコートして、千早も脱ぐのかと思いきや桃色のシーツへ女体を貼り付けてブラジャーと揃いのショーツをずり下げる。
「…あの、着替え…?」
「予定変更…スーツは後回し………チカちゃん、脚もっと開いて」
「なに、やですよ」
足首を握ってぐいぐいとM字に開脚、無言でまじまじ見つめた千早が次に口走ったのは
「舐めさせて」
で、当たり前に知佳は拒んでいつになく全力で暴れた。
「ひッ…いや!やだッ!」
「前の男にはさせた?ええやん」
「ないですっ…お風呂、あの、汚いッ、」
「チカちゃんに汚いとこなんかあれへん」
「やだ、やだッ……やだ、諒介さん、」
温かい息が掛かって痩けた頬が太ももに触れる、ちりちりの陰毛がそよいで蒸れた女陰の匂いが千早の鼻をつく。
「……チーズ臭いねぇ」
「ッッばかッ‼︎やだ、離してッ…」
湯沸かし器ならとうに煮立って蒸発しているような顔色と勢いで知佳は抵抗し、しかし強めに握られた足首に男の指が食い込んで筋にめり込み痛くって、けれど温かい感触が当たればだらんと力が抜けて口をわなわなと震わせた。
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