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5月
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しおりを挟む終業後、知佳は帰宅してまず服を脱ぎ、軽くシャワーを浴びてムダ毛などをチェック、そして買ったばかりのランジェリーと緩いプルオーバーのシャツに首を通す。
いつも千早は「んな胸元がユルいの着るな」と怒るので控えていたが、行き先が行き先なので用途に合っていると思ったのだ。
緊急時に備えて毎日チェックはしているのだが今一度ムダ毛の点検をして、ハイウエストのジャンパースカートを穿いた。
「(スカート…前に好きだって言ってた…)」
どくどくと身体中の細胞が仕事をする感じ、そわそわした手は震えて掴もうとした財布を床に落としてしまう。
何度も抱かれているのだ、何を緊張することがいるのか。
けれどドキドキするこの気持ちが恋なのだろう、深呼吸をしつつ上がっていく心拍数を手のひらで読んだ。
車よりも軽く弾けるエンジンの音が聞こえて、カーテンをゆっくりヘッドライトの光が通過してもう一度戻って来て、消える。
王子様のお成りだわ、知佳はそんな気持ちで玄関の鍵を開けた。
「こんばんは、」
「こんばんは…お、スカートやん。可愛い」
「へへ…」
やっぱり褒めてくれた、緊張は安堵へと少しずつシフトしていく。
二人はいつぞやと同じように徒歩で生活道を抜けて、コンビニで晩飯を買いすぐ隣のラブホテルへと入った。
前回とは異なるテイストの設え、おそらくフランスを意識しているのか壁には建造物の写真やお洒落な絵画が飾られている。
「わ、スッチー」
備え付けられている今回のコスプレ衣装はCA風のセットであった。
「それ着る?」
「いいえ…先に食べましょうか」
「うん」
モニターを地上波放送に切り替えて何となく公共放送にチャンネルを合わせて、二人は黙々と食事を済ませる。
千早はニヤニヤとジャンパースカートの造りを窺ってどう攻めてやろうかと考えたりもしたが、小さく口を動かしておにぎりを噛む彼女がいじらしくて…指針を変更した。
「ごちそうさん」
「ごちそうさまでした」
「ほな、はい」
千早はベッドに深く腰掛けて、知佳へ向けて両手を開く。
「なんですか?」
「忘れた?チカちゃんが誘ってんで。脱がしてよ。俺はゲスト、客よ。チカちゃんがサービスせな」
「…悪趣味」
誘ったけれど千早がセットした設定は『お店』だろう。
しかし生憎と知佳はプロのお店がどのような流れでサービスをするのかまでは知らないのだ。
「客を緊張させへんよう、お話せな」
「……お兄さん、地元の人?」
「ひひっ♡うん、でも生まれは大阪よ」
「へぇ……こういう店、よく来るの?」
「久々よ…可愛い子がいてるから来てみよ思うてん♡」
「…ばか」
なんて薄っぺらくて白々しくてわざとらしい会話だろう、それなのに作業着を脱ぎ捨てながら笑うその意地悪な顔がやはり知佳は好きで仕方ない。
「阿呆な、ん、ほなお姉さんも脱いで、やらしい下着、見して」
「…期待、なさらないで」
ストリップのように肩紐を外してスカートの腰を足首までストンと落として、シャツを捲ればそこから透けたレースとフリルが見えた。
「…かわいい…えっろ♡」
「……」
「なぁ、こんなんどこで買うてん?お姉さん」
「ネットです…」
「客を喜ばそう思うて?」
「……そうですっ!」
透けたサーモンピンクの生地のキャミソールスリップは胸元と裾だけ黒地が入りシャープになっていて、フリルの裾をぴろっとめくれば共布のショーツも下から覗く。
肉付きの良い太ももに掛かるフリルがいやらしくて、透けて見える向こう側はさらに…千早はニヤァと笑いベッドへ寝そべった。
「ひひっ…ほな、時間がもったいないから始めよか、おいで」
「…はい、」
隣に知佳がちょんと座って横になろうとすれば、
「おい、何してん。お姉さん」
と千早が待ったを掛ける。
「は?」
「お姉さんは俺の上に乗んのよ。わかる?」
「………えぇー…」
それは騎乗位をしろということか。
とりわけ太っている訳でもないけれど、ぶるんぶるんと肉が揺れたり顎にシワがよるところを見られたくない。
刹那にそんなことが頭を過ぎるものの、知佳は大人しく膝立ちになりショーツを脱いだ。
「ゴムは俺が着けるから。勃つまで触って、元気にしてよ」
「…素手?」
「当たり前やろ」
「………失礼します……わ、あ…」
千早はもう既にスタンバイ状態だったのだが、するすると手で撫でるとさらに強度が増して照りが出る。
もじゃもじゃとした陰毛、その下の子種を蓄えた袋はひくひく収縮と膨張を繰り返してはそこだけ独立した生き物のようにも見えた。
「ん♡」
「…あったかい、んですね、」
「そら生きてるから」
「あはは…すごい…血管が…わぁ…」
「お姉さん、ちんちん見んの初めて?」
「はじ…いえ、こんな間近で見ないもので…」
仕事終わりの男の汗の匂い、皮脂とか尿とかの成分も含まれているのだろう。
酸っぱいような塩っぱいような、でも石鹸の匂いも僅かに残っている。
本当のお店だったら入浴必須だろう、でもありのままの姿を見せられる、見せても嫌われないだろうと信用されているのだとしたら…それはなかなかに知佳は喜ばしかった。
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