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3月
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しおりを挟むある日の商品管理室。
「ただいまー!チカちゃん、これあげる。お土産」
ロビーへ帰ってきた配送スタッフのひとりが、部屋の窓を開けて菓子の箱を差し出した。
「お帰りなさい…あ、ありがとうございます…旅行されたんですか?」
「せやねん、海外にちょっとね。楽しかったよ、事務室のみんなで食べてな、」
「わぁ」
南国風のパッケージで中身はおそらくチョコレートか。
終業間際で腹ペコの知佳は目に見えてウキウキしだす。
しかし個装ではなさげな様子なので開封はすぐにせず、室内の冷蔵庫へ収めることにした。
「食うたらええのに、」
「いえ、均等に分けないと…帰るときに開けますね」
「ん、真面目やな」
そんな2人のやりとりを眺める男の手の中で、ボキッと割り箸を割るよりももう少し大きく硬質そうな音がして…鉛筆がくの字に曲がる。
「……いてぇ」
「あ、また折ったやん…お前自分で削れよ」
ハイペースで鉛筆を臨終させる千早に呆れ、高石は匙を投げる。
「アイツ…チカちゃんに馴れ馴れしいねん…菓子で気ぃ引くとか餓鬼やないねんから…」
「お前も前に饅頭貢いでたやないか…」
「渡したらさっさと帰れや…クソ…」
せっかく疲れて帰ってきたのに先客がのさばっていて知佳と触れ合えない。
翌日の配送準備にかかるも集中できない千早はギリギリと歯を噛み合わせて悔しがった。
奴が去ってすぐに窓を訪ねては待っていたようでみっともないし、握手会の順番待ちのようで張り切っている感じが伝わるのも恥ずかしい。
これは呼び出して食事でも…と思ったが彼女は先約があり夜は出かけると言っていた。
「なんや菓子でも買うて持って行こか…」
やはり餌付けじゃないか、高石は当然そう思ったが発言はしないでおく。
「よいしょっと…明日何件?……んー、はいはい…」
長机に戻った先程の配送員も翌日準備にかかり、自社スタッフと分担を決めに入ったようだった。
そしてその作業が終わるとエレベーター前へ移り、トラックへと配送商品を積み込み作業をする。
「モルちゃん、チョコおおきにね。旅行楽しかった?」
他社配送スタッフももちろん土産を貰っていたので、隣のトラックで同時進行している高石が件の配送員・モリシタへ声を掛けた。
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