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4月

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「俺にレイプされる思うて本気で逃げてよ」

「物騒な…あ、」

「動かへんやん、ほら、犯されてまうよ」

 細く長い指に縛られた手首はもがいてもびくともせず、「おぉ…」と驚くその顔に男の影がかかる。

「………!」

 そして目を閉じる間も無くゆっくりと口付けて、千早は知佳の手首を離し床へ肘をついて彼女の頭を腕で囲った。

「ん、んム…キスは違うでしょ、」

「ちゅーから始める変質者やっておるよ、チカちゃん、逃げられへんやろ?分かってて誘った?」

 眉を吊り上げて「悪い女やな」とでも言いたげな意地悪な顔に知佳は萌えスイッチを刺激され、

「違う、あ……参りました…やっぱ男の人だな…」

と白旗を上げくてっと顔を逸らす。

「降参か。よぉも侮辱してくれたね、仕返ししてもええな?ええね?」

「やだ、暴力反対っ!」

 知佳が胸と股を手で押さえれば、

「せぇへんわ、」

と千早は起き上がり諸手もろてを挙げた。

「嫌がられたら勃たへんし……だらだらエッチはせぇへんの、マイルールよ」

 する時はする、しない時はイチャイチャまで、これは昼と夜をそれぞれ楽しむ為の千早の信条である。


 知佳はむくりと起き上がり髪の毛を直して、千早は座卓をカーペットの中央へ戻して元の位置へ座り直した。

「…千早さんのそういうところ好き」

「ん、紳士やろ」

「うん、好き♡」

 そう言って笑う口元の八重歯が可愛らしいので、千早は食べ始めた知佳の箸を奪ってこちらもニィとわらう。

「食わせたろ、な、あーんして」

「嫌だ、自分で…あ、あー…あム」

 いさかいの元凶であるハムチーズコロッケと鶏天を知佳の箸で口元へ運ぶ、開いた隙に覗く歯を観察する、咀嚼するその姿をじぃと見る。

 彼女の顔が真っ赤になり目に涙が浮かぶまで千早はそれを続けた。


「ひひっ…反省した?」

「なんの反省ですかっ」

茹でだこ状態の知佳は箸を奪って、コロッケを頬張る千早を睨む。

「亭主に逆らったことに対してよ」

「亭主じゃないし!亭主関白反対!」

「分からへん、けど弱いくせに上から来られると腹立つな」

顎についた油を拭い、千早は四白眼のギョロ目で女房を睨み返した。

「えー、ケンカできないじゃん」

「こっちに非がありゃ改めるけど……今回のは生活様式の違いやろ。洗いもん増やしたないのも充分理解出来んねんけどー……見た目によろしないやん…あ、コップみたいに揃いの皿買おか?んで俺との食事はそれ使お、アカン?」

「えー…片付けるスペースがなぁ…」

「これもアカンの?したらな………」


 話し合いに次ぐ話し合いは長々と続き、「マルチに使える皿を2種類ほど色違いで買いに行こう」という折衷案で決着する。
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