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3月

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 3月初旬のとある夜…場所は千早が選んだ街外れのアミューズメントホテル。

 いい大人なのだから記念ということもないのだが、折角なのでそれなりの体裁を整えての夜だった。

 表記上は「ラブホテル」とは呼ばないらしい。

 千早はてっきり面白い催しでもある宿屋の事かと思ってそこをピックアップしたのだが、結果的にはそれで目的にマッチしていたようだ。


「上がったよー…うん?」

 男がシャワーから上がると、BGMもインフォメーションモニターも電源を落とし、静かな部屋でベッドに腰掛ける知佳の姿があった。

「チカちゃん?……えらい静かやね…」

「うん…なんか…騒がしくて…」

 その背中からも緊張している様子はヒシヒシと伝わってくる。

 しかし照明は落とさずにいてくれたのが千早には嬉しくありがたかった。

「ええよ、したいようにしよ、」

「正直その、久しぶりで…」

「いつぶりよ?」

「6年…」

 それは就職前、大学生の時が最後であった。

 敢えて今日まで聞かなかったがそれは朗報…千早は首筋の水気を拭き取りながら冷蔵庫の無料の水を取り出してペットボトルの封を切る。

「ぉえー、そらもう処女やんか」

「ではない」

「いやいや、塞がってるやん」

水をぐびっと口に含み唇を湿らせ、千早はだいぶん明け透けな言い方をした。

 そうだったら良いのに、千早は特別処女信仰が強いわけではないが好きな女性に踏み込んだ男は少なければ少ないほど喜ばしいと思っている。

「わかんないけど…」

「チカちゃん、嫌なら言うてくれよ」

「いや、ではないですよ。うん。馴れてないだけで…あの、実は…こういうホテルも初めてで…」

セックスもそうだが、この明らかにそれ用にしつらえられた部屋の様相に緊張し、知佳は萎縮してしまっていた。

 バスローブを羽織ったままカチコチに固まり、千早が近寄るごとに視界から外そうと反対側ばかり向いてしまう。

「なんや可愛い…顔見せてぇな。恥ずかしがってんねやろ?」

千早は一気に距離を詰めて隣へ座って腰を抱き、背ける顔を拝もうと覗き込んではニタニタとわらう。

「いーやー!恥ずかしいから隠すんですって!」

「おらおら、その恥ずかしい顔見せんかい」


 小競り合いはしばらく続き、観念した知佳の唇を千早が捕まえて部屋が静かになり…ぎゅうと二人は抱き合った。

「ん、チカちゃん、ええ匂いする…かわいい」

すんすんと首筋の匂いを嗅いで唇を添わせ、バスローブの襟に手を掛けると知佳はビクンと体を強張らせる。

「あ、あの、本当…大したことないっていうか…スタイル良くなくて…あの、ご期待に添えるか分かんなくて…」

「卑屈やなぁ、俺はスーパーモデルを抱きに来てんとちゃうのよ、チカちゃんを抱きに来てんの、刺青イレズミがあろうが腹が段になってようが構わへんよ」

「彫ってないしそこまで肥えてない!ッ…あ、わ!」

 緊張が解けた一瞬をついて肩をはだけそのままストンと腰までローブを落とせば、締りはそれ程無いものの膨らみとくびれがちょうど良く備わった知佳の上半身がお目見えした。

「ん、ええやん、やったね、初おっぱい」

「やっ、……あの、」

「ん、肌合わせよか、見えんかったらええやろ」

千早も腰までローブを下ろし、腰掛けた状態のまま知佳を胸に抱く。

 そしてその柔らかい感触に安らぎの気持ちを得る。

「はー…むにむにしてんな…気持ちええわ…」

「千早さん…細い…私より細い…」

「んなことあれへんよ、胸板もまぁまぁやろ…ん…おっぱい見てもええ?」

「ほんと…そんなキレイじゃないの…あの…わぁ…」

 体を離して見下ろせば、千早からすれば充分な大きさ・美しさの塊が2つ、ふるふると本体の揺れにつられて震えていた。

「かわいい」

許可取りも答えも要らない、千早は丸い乳房に手を添えてその柔らかさに集中する。

「うわ…ぁ…んッ♡」

「おっぱいは感じる方?」

「え、分かんない…」

「色々試すけど、嫌やったら止めてよ」


 何をする気か言葉で説明を求めたところで千早はきっと嬉々として語るだけだろう。

 知佳は聞かず、男は顔を近づけて乳首へ唇を付けた。

「ひゃっ」

 骨張った手で丸みを持ち上げてはたゆたゆと水風船の様に揺らし、がっしり握っては跳ね返す弾力を手の平で味わう。
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