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調査・皇路北店
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しおりを挟む「フロア長?」
「ど、どうして」
「いや、その条件に当てはまるのは小笠原フロア長だけだったから…匂わせかと思っちゃった」
あまり攻めるとハラスメントになるがどうだろうか、松井くんは一頻り目を泳がせてから周囲を気にして「まぁ、まぁ」と今さら取り繕う。
独身だし悪いことでもないし婚姻率を上げるのは推奨なのだが、まるで中高生男子みたいな誤魔化し方にこちらまで恥ずかしくなってくる。
「…ごめん、個人的なことを。仲良くって恋愛に限ったことじゃないし」
「いえ、んー…うー、」
彼はおそらく葛藤しているのだ。
女ボスと呼ばれる小笠原さんと懇意であることの優越感を示したい、けれど二人の関係を大々的にしたくはないと。
僕としては恋愛関係でもただの友人関係でも良いのだが、「お友達なんだね」と微笑めば彼は少々眉を吊り上げて
「去年から交際してまして」
と昨日今日の関係じゃないことまで教えてくれた。
長身で体格の良い小笠原さんと松井くんが付き合ってるのか、意外だったが良いパワーバランスだと感じる。
松井くんの勢いを小笠原さんが受け止めて良い方向に持って行っているのだろう、健康で幸せに働いてくれるのが一番だから僕は口出しできることは無い。
「そう、これからも仲良くね」
「は、はい」
小笠原さんは自身の被害については何も言っていなかった、それは意図的に隠したのかそれとも。
彼女のことだから「年増の私のは被害のうちにも入りませんわァ」なんて謙遜したのか。
浜田くんにつけ込まれるような弱い女なのだと僕に知られたくなかった、あるいは浜田くんにそう思われたこと自体を恥じていたとか。
彼女はバツイチであることをたまに自虐的に言うけれど、そこを弱点として扱われるのは好ましくないはずだ。
しかしそんな被害も松井くんには打ち明けていたのだな、彼の口を割らせたのは小笠原さんにとっては不都合だったかもしれない。
この件が解決したらまた謝りに行こう、僕は他の仕事をこなしては次の街へ向かう準備に入る。
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