嬉野エリア長の調査報告書…娘と会社の治安は僕が守る。

後日談・嬉野一家

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「うん、だからまず本社の方が認知してたらしい。でもさ、怪文書だったらしいんだよ。ポエミーというか、断片的というか。具体的に何をしたのか、何を伝えたいのかが分からなくてしばらく寝かせといたらしいんだ」

「えー、警察沙汰になったらどうすんの」

「その点は、上からお叱りがあったみたいだよ。危機感が足りないって。総務はイタズラだと思ってたみたい。そうこうしてる間に、ヒロミさんは地元の他店舗宛てにも同様のメールを送り出した。ヒロミさんは自宅から恨み節を送るだけ、お金は掛からない。その代わり、当の浜田はまだくんがどうなったかも分からない。気になった彼女はついに、『浜田さんはそちらの店に居ますか』って電話を…周辺一帯にしていったそうだ」

「…めいわくー」


　個人情報保護の観点から、社員が他所の店舗へ異動しても基本的に教えることは無い。

　お得意様には前もって連絡しておくし、ざっくりとした地域を伝えるくらいで大概の客は納得する。

　ヒロミさんは手当たり次第に電話をしたが、受け付けたスタッフが「おりません」と答えるだけなのでそこで完結する。

　小さなお問い合わせは上長にまで話が上らず、ヒロミさんの浜田探しは長期に渡り繰り広げられたのだ。


「そんな時、ある店舗でたまたま店長自らその外線に出た。当然所属してないって答えたんだけど、店長は怪しがって九州担当のエリア長に『この近辺にハマダって社員います？』って世間話程度に尋ねた」

　エリア長は地域の社員を把握しているが、彼の記憶には浜田の情報が無かった。

　まぁ何か起こった訳じゃないしと心に留めておき、本社のエリア長会議の前の雑談にて「そういえば、どこかの地域に九州に縁ゆかりのある浜田さんっている？」と軽く尋ねた。

　当然僕もその場におり、過去の問題を把握している南関東のエリア長と共に「それ、怪しいです」と注意喚起、そこから大事になって来た。

　個人のゴタゴタを会議で広めるのは気が引けたがざっくりとあらましを説明し、浜田の悪行は全国エリア長に共有されてしまった。

　とりあえず本来の会議は進めたのだが、そこで浜田が九州の店に異動する案が上がっていることが南関東のエリア長から発表された。

　「問題あるんじゃない？」「でも営業力はあるし」なんてひと通り話し合って、過去のことと電話との関連は不明だしと異動は予定通り敢行された。


　妻は会社のシステムなどは既知なので、僕はこれらのことを簡潔に話した。