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後日談・嬉野一家
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しおりを挟む「百合子、浜田くんって覚えてる?」
帰ってすぐ僕がそう尋ねると、妻は記憶を辿ってしばし固まって、
「あー、あの、女ったらし!」
と人差し指を立てる。
あの一件からほぼ2年が経過、僕の担当店舗にも色んな変化があった。
嘉島さん夫妻のところには無事双子が生まれた。
今年に入ってからは法人の清里所長、白物の高石さん、商品管理室の千早さん、そして西店の葉山さんなど出産ラッシュだった。
さらに小笠原フロア長もご懐妊、お相手はもちろん松井くんで、関東に所属を移して先月元気なお子さんを出産された。
その他にも昇進したり転勤したり、さまざまなことがあった中…宮前くんから浜田くんについてのお知らせが入ったのだ。
「そう、その浜田くん…この度、ふるさと人事で九州に戻ったらしいんだよ。県で一番大きな店舗のブランドコーナー、」
「へぇ、それって栄転じゃん」
「事実上そうなるね。でさ、結論から言うと、早くも浜田くんの女癖の悪さが広まったって言うんだよ。その地域一帯の店舗に」
「…直人さん、あの報告書送っちゃったの?」
妻は目をまん丸にして僕を見つめる。
確かに、僕はいつかリーク出来るように浜田の女性遍歴や女遊びの様子をまとめて報告書に仕立てていた。
それどころか、いつでも発送できるようにメールフォームに添付までして保管していた。
けれど、今回彼の悪評を広めたのは僕ではない。
「まさか。まずね、本命彼女さんのお父さんも浜田くんのことを調べてたんだよ」
「えぇ?何で?」
「浜田くんは本命さんとの結婚の話が進んでたんだろうね、いい歳だし。それで、長く県外に居る浜田くんの素行調査をお父さんが興信所に依頼したみたいなんだ」
「…わざわざ、」
「本命さんもお父さんも公務員らしいんだ、お父さんは県議か何か。それで、変な奴と縁続きになれないから調べたら…出るわ出るわ、女遊びの数々が」
「うひゃー…」
それ自体はすっぱり止めれば縁に問題は無いのだろう。
しかして調査の目的である結婚をするにあたり、女癖の露呈は本命さんの心に大きなショックを与えた。
もちろん、親御さんとしてもそんな不埒な男と娘を結婚させるはずも無い。
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