嬉野エリア長の調査報告書…娘と会社の治安は僕が守る。

いざ復讐・横浜

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「気は晴れましたか」

駅に向かうタクシーの中で、宮前みやまえくんが寂しそうに尋ねる。

「うーん…オジサンになってケンカすること無いからさ、内心ビビってたよ。頭に血が昇ってたけど、『会社クビになったらどうしよう』とかどこかで考えてたし…今も恐い。浜田はまだくんが翻意して通報されちゃったら、とかね」

「手を出したのはまずかったですね。でも…嬉野うれしのさんの気持ちも分かりますし…交渉が成立したから良かったんじゃないですか」

「うん…強迫だけどね」

「僕らって変に恫喝どうかつ慣れしてるんで、メンタルケアとかは不要だと思いますけど…向こうのフロア長と店長と、今後は代理で僕が見届けますよ」

「ありがとう」


　駅に着いて僕は宮前くんと固い握手を交わした。

　僕の定年までにまた会うことがあるだろうか、まぁ理由を付けて会いに来れば良いか。

　ホームまで見送ってくれた宮前くんに最後まで手を振って、僕は地元・兵庫へと走り始めた。



「（復讐、完遂なのかな）」

横浜の店長に連絡を済ませて、お弁当を開ける気にもならず新幹線の僅かな揺れに目を閉じる。


　胸倉を掴むのは本当にやり過ぎたと反省している。

　冷静になれば、浜田のせいで職を失うなんて馬鹿馬鹿しい。

「（もっと大人のやり方で、話し合えると思ってたのに）」

　良識的な人間にはまだまだなれてないらしい。

　マリアさんのお父さまに便乗して、感情的に脅して怒鳴り上げて、言葉まで崩して。


「（…お腹空いた）」

　ある程度のお咎とがめは覚悟しておこう、富士山を通過した辺りでやっと元気になり、弁当を摘んでパソコンを開く。

　今回の浜田の聞き込み調査内容と、自身の見聞きしたことを報告書の形で文書に仕上げた。

　もし僕が捕まったらこれを浜田の地元一帯の店舗に送付するよう仕掛けておこう…さらに罪が重くなるようなことを、はっちゃけたテンションは可能にしてしまう。

　店宛ての問い合わせメールフォームにテキストを貼り付けて保存、保険として持っておくことにした。