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いざ復讐・横浜
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しおりを挟む「嬉野さん、どうされましたか」
フロア長は、管轄外の僕に呼び戻されたことを不思議に問う。
おずおず付いて来た浜田は、顔を見て僕を思い出したようだった。
「フロア長、僕は今日、客として…一般人としてここに来てる。だからバックヤードには防犯上入らないよ、ルールだからね」
都合良く公私を混交させて、自分でもおかしいとは思うが言わない。
「はぁ、とりあえず端に」
「うん」
バックヤードの扉は、当然だがスタッフの出入りがある。
行き交うスタッフが「浜田さん、何かしたのか」と好奇の目で見てくる。
まぁそれは浜田には効いてないみたいだ。
「…浜田くん、僕が誰か知ってるかな」
「近畿のエリア長でしょう、嬉野さん」
「うん、面談したよね…兵庫のさ、皇路ってとこに君は居たよね、街の記憶はあるかな」
「はい、つい最近なので」
「うん、ならさ、そこで恋人関係にあった女の子の名前は憶えてるかい?」
何人でも良い、うちの葵の名前が何番目に出たって構わない。
でももし忘れていたら、記憶から抜け落ちていたら。
ばくばくと心拍数が上がって行く。
「は?何でそんなことを」
「客の疑問には答えるものだ。嘘でも適当でも良い、誤魔化してでも無返答は許さない」
我ながら滅茶苦茶なことを言っている。
でも馬鹿なのか正直なのか、
「…コンビニのカナコ、大学生のトモカ、…ガソスタのミキ、」
浜田は記憶の糸を辿って女性遍歴を披露していく。
「ふむ」
「えーと…ラーメン屋の…何だっけな…ユキ、」
「ムラタ内では?社内では無いか?」
「あの、社内恋愛に罰則とか無かったと思いますけど」
生意気に浜田は規則を持ち出す。
しかし君にだけはこの理不尽さを責められたくはない。
「無いよ、でも僕はそんなムラタのルールは知らないよ。客だからね…さぁ、社内で…店内で。手を付けた子はいなかったか?」
「えーと…雑貨の…ヒロミ、」
それは「自分も交際していた」と吹聴して葵に「自分の方が本命だ」と直接攻撃して辞めた子だ。
「ケータイのサナ、」
それは初耳、さてそろそろ出てくるか。
浜田は「うーん」と頭を捻って捻って、
「レジの……葵、」
とうちの愛娘の名前を放り出した。
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