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いざ復讐・横浜
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しおりを挟む「……帰ります?嬉野さん」
「うん…エリア長に報告だけしておこうかな」
僕はその場で浜田の所業をこの地区の人事担当に電話で伝えた。
フロア長は目撃していたし、マリアさん本人から証言を得るだろうから改めて説明も要らないと思う。
僕が電話している間に浜田はバックヤードに連行されていき、残ったスタッフはわたわたと通常業務に戻っていく。
マリアさんのお父さまはまだプンプン怒っていたが、奥さまに手を引かれてフロアから離れたようだった。
「…情けないな」
自分もあんな風に、「うちの娘に何てことを!」と叱り飛ばせれば良いのに。
立場上とか世間的にとかだけではなく、度胸が足りない。
「嬉野さん、僕らは今、客としてここに来ています。客としてなら、何を言っても良いんじゃないですかね」
宮前くんは、店長にあるまじき発言で僕を驚かせる。
「…クレーマーにでもなれって?」
「いいえ、もちろん常識の範囲内で。でも、僕は公私いずれにしても嬉野さんが立場は上だと思いますけどね」
「……そうだねぇ」
本社採用の僕だって、新入社員の頃は売り場に研修に行った。
僅かな期間の中でも数々の苦情に遭ったし、プライドを酷く抉られた覚えもある。
自分がその嫌なタイプに成り下がろうか、首をコキコキ鳴らしてショーケースへと向かう。
「すみません、先ほどの浜田さんに、僕も話があるのですが」
ブランド品担当のマリアさんは「えっ」という顔をして、トランシーバーの襟元マイクに指を置く。
そして僕は浜田が連れて行かれたバックヤードに繋がる扉へと歩く。
背後では宮前くんがマリアさんに「本社人事部の嬉野さんです」と追加で無線を飛ばさせたようだ。
そして彼も僕を追って、壁際の観音開きのドアの前に陣取った。
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