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いざ復讐・横浜
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しおりを挟む1階、入ってすぐは華やかな携帯電話売り場。
キャリアごとのジャンパーを着たスタッフが、口々に「いらっしゃいませ」と囀る。
子供に風船を配ったりビンゴカードを手渡して来たり、平日なのに活気に溢れていた。
「観光客の方も多いですね」
「そうだね…あ、こんにちは。お久しぶり」
かつて担当していた管理職を見つけては、声を掛けて近況を聞く。
僕はプライベートで訪れているので世間話程度だが、目を付けていた子が昇進していたりすると感慨深いものがあった。
「ブランドは…3階ですね」
「2階は?」
「生活家電ですね。その上がエンタメとカフェとブランド品です」
「いよいよって感じだね」
敵の総本山といった雰囲気に、少しだけ気が重くなる。
浜田に会っても娘の問題は解決しないだろうし、そもそも彼が今日出勤かどうか分からないし。
もしお休みなら評判だけでも聞いておこうかな、エスカレーターは3階へと僕たちを運ぶ。
「わぁ、外国人客ばかりですね」
「本当…ありがたいことだね」
お土産なのか転売用なのか、海外からのお客さまはほとんどこのブランド品コーナーに集まる。
時計、サングラス、ガスライターにハンカチなどの服飾小物。
バッグは専門外だが、いずれ取り扱う日が来るかもしれない。
「スタッフも外国の方がいますね」
「そうだね、少なくとも全員英語は堪能なはず」
ミルクティー色の金髪の女性スタッフは明らかに僕たち日本人とは人種が異なる。
ペラペラと外国人客と会話して時計を売って、別れの挨拶なんかも欧米チックだ。
「(浜田くんは、この中で上手くやれているのかな)」
彼は飛び抜けて有能という訳ではなかった。
「家電を売りたくない」という気概は感じられたが、「ブランド売り場に誇りを持っている」という風には思えなかった。
本人の強い希望で担当を続けさせたものの、こちらで挫けてはいやしないだろうか。
敵とはいえ、浜田の現状が気になってしまうのは職業病というやつなのだろうか。
ちょっぴりしんみりしてフロアを眺めていると、
「……嬉野さん、あそこ、」
と宮前くんが指を差す。
「……いたね」
指の先のカウンターには、僕の目的である浜田が立っていた。
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