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いざ復讐・横浜
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しおりを挟む2週間後、本社業務を終えた僕は懐かしき神奈川県へと降り立った。
大学もこっちだったし、妻と出逢ったのもこっちだったから思い出深い土地だ。
さて横浜に殴り込もうとタクシー乗り場へ向かえば、見覚えのある背格好の男が待って待ち構えていた。
「…あれ、宮前くん!」
「嬉野さん、お久しぶりです!」
「どうしたの、仕事は⁉︎」
「休みなんです。たまたま、」
「…悪い子だ」
きっと、本社での定例会議の日程を調べ上げて休みを組み替えたのだろう。
僕はこちらに来る詳細は伝えていなかったのに、こんなドンピシャで会えるなんて偶然ではあり得ない。
用事を済ませてから店に顔を出そうと思っていたが、良くも悪くも勘と知恵の働く男だ。
「まぁまぁ、近いですから向かいましょう」
「分かった」
並んでタクシーに乗り、浜田のいる店を目指す。
「それで、どうするんですか?まさか面と向かって言う訳じゃないでしょう?」
宮前くんはイタズラにそう言って、僕を挑発した。
「まぁね…実際、決めかねてるよ。娘に『復讐して』って頼まれた訳でもないし」
「浜田さんは、嬉野さんの顔を知ってるんですよね?」
「もちろん。人事担当として何度も会ってるよ」
「娘さんと、嬉野さんの関係については?」
「それは不明。でも、二股してるとはいえ、彼女の苗字と同じ苗字の人が近場に複数人いたら親戚かなとか思わないか?」
「そうですね…でも、『佐藤』『鈴木』姓は複数人いても不思議無いですよ」
「いや、『嬉野』よ?珍しいだろ…」
僕たちがそんな不毛なやり取りをしている間に、タクシーは浜田のいる店舗に着いてしまった。
大都市の中心部から少し離れた大通り沿い、かつてお世話していたので僕は懐かしく感じる。
しかして隣の野心家くんは目つきが険しくなって、「良いですねぇ」なんて侵略者みたいに笑うので恐かった。
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