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調査・皇路北店
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しおりを挟む「もしもし、百合子?今ホテルに着いたとこ」
僕は夕方までにもう1店舗回り、きちんと業務をこなして地元の隣市のホテルへチェックインした。
『お疲れさま、うちは晩ご飯食べ終わったところよ』
カチャカチャと陶器を洗う音がする、妻はハンズフリーで通話を取ったらしい。
「そう、僕も今食べてるとこ。報告書上げたら休むわ…例の件、ちょっと話せる?」
『ううん、それはまた今度で良い。これからみんなで代表戦観るから』
「あ、サッカーね…うん、分かった。変わったことがあればまた連絡するよ」
『はいはーい』
リビングには娘も居るのだな、そして親とテレビを観るくらいに機嫌は悪くないのだろう。
妻の控えめな言葉からそれらの事を予測して、報告用のノートパソコンを立ち上げる。
「…まとめてやりたいや」
僕の仕事は基本ひとりで行なっているから、勤務態度は上長に伝えることが出来ない。
なので、どれくらい取り組んでどれくらい頑張っているかはこの報告書に込めることとなる。
どこの店舗でこんな人的トラブルがあってどう処理したかとか、人事に関わる事柄は著しく私的なもの以外は書くようにしている。
さて、浜田に関わる一連のトラブルは業務に絡めて良いのだろうか。
被害者は数名、ショックは大きけれど会社の損益に触れるものではない。
あくまで私的な色恋沙汰だ。
娘のために出来ることはしてやりたいが、やはり罰を与えるなんてことは出来ない。
僕はアナログ方式で記録を残しておくことにした。
「…モテる…地元に本命彼女あり…ナンパもしてた……っと」
個人の手帳に浜田について得た情報を書き記し、本業の報告書はしっかり本部へ送信した。
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