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調査・皇路北店
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しおりを挟むちなみにだがこの北店にはもう1人、僕と関わりの深いスタッフがいる。
何を隠そう妻の百合子である。
時短勤務で夕方までなので、バタバタしていて声を掛けることが出来なかった。
営業事務歴20年以上のベテラン、彼女がいれば大抵のことは上手く回るそうだ。
「(ちょっとは、顔見たかったな)」
歳も歳だし、トキメキとかそんなものでもない。
けれど家庭と同業者という2つの部門で長年共に闘った仲間というのか、戦友みたいな絆がある。
パートナーだしバディーだし、妻だし部下だし会えるなら会いたかった。
殺伐とした空気の中で冷静に働く百合子の姿が僕は好きだし、客に見せるフニャッとした笑顔も可愛げがあって好きだ。
娘の葵は僕に似ているから、若い時の百合子の写真を見てもあまりピンと来ない。
でも歳を重ねると娘は母親に似てくるとか聞いたことがあるし、それはそれで楽しみだ。
僕はそこまで性に貪欲ではないから、妻が老けたからといって他に癒しを求めるとかは考えたことがない。
神前で誓ったからというのもあるが、多忙で時間に余裕が無いからというのも大きな理由だ。
1日の多くを移動時間に取られるから、まとまった暇があれば実のあることに使いたいというのが本音である。
近ければ自宅に帰りたいし、難しければ読書などに費やしている。
最近は電波が繋がればスマートフォンで大体のことは叶うから不便は無い。
若い頃は終電に乗ってでも自腹を切ってでも自宅泊まりにしていたが、寄る年波には勝てないもので…翌朝のことを考えると大人しくホテル泊が懸命なのであった。
今夜は報告業務を済ませて百合子に電話してみよう。
それか夕食を摂りながら掛けてみようか。
もういい加減、ホテルのレストランにも飽き飽きしている。
系列店ならメニューも同じだし、観光地でもない土地の飲食店に繰り出して失敗するのもしんどい。
経費で落ちるとはいえ、博打は打ちたくないものだ。
なのでホテルに着くまでに食料を調達せねばなぁと、ぼんやり移動中に考えていた。
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