嬉野エリア長の調査報告書…娘と会社の治安は僕が守る。

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
16 / 45
調査・皇路北店

16

しおりを挟む

 ちなみにだがこの北店にはもう1人、僕と関わりの深いスタッフがいる。

 何を隠そう妻の百合子ゆりこである。

 時短勤務で夕方までなので、バタバタしていて声を掛けることが出来なかった。

 営業事務歴20年以上のベテラン、彼女がいれば大抵のことは上手く回るそうだ。


「(ちょっとは、顔見たかったな)」

 歳も歳だし、トキメキとかそんなものでもない。

 けれど家庭と同業者という2つの部門で長年共に闘った仲間というのか、戦友みたいな絆がある。

 パートナーだしバディーだし、妻だし部下だし会えるなら会いたかった。

 殺伐とした空気の中で冷静に働く百合子の姿が僕は好きだし、客に見せるフニャッとした笑顔も可愛げがあって好きだ。

 娘のあおいは僕に似ているから、若い時の百合子の写真を見てもあまりピンと来ない。

 でも歳を重ねると娘は母親に似てくるとか聞いたことがあるし、それはそれで楽しみだ。


 僕はそこまで性に貪欲ではないから、妻が老けたからといって他に癒しを求めるとかは考えたことがない。

 神前で誓ったからというのもあるが、多忙で時間に余裕が無いからというのも大きな理由だ。

 1日の多くを移動時間に取られるから、まとまった暇があれば実のあることに使いたいというのが本音である。

 近ければ自宅に帰りたいし、難しければ読書などに費やしている。

 最近は電波が繋がればスマートフォンで大体のことは叶うから不便は無い。

 若い頃は終電に乗ってでも自腹を切ってでも自宅泊まりにしていたが、寄る年波には勝てないもので…翌朝のことを考えると大人しくホテル泊が懸命なのであった。


 今夜は報告業務を済ませて百合子に電話してみよう。

 それか夕食を摂りながら掛けてみようか。

 もういい加減、ホテルのレストランにも飽き飽きしている。

 系列店ならメニューも同じだし、観光地でもない土地の飲食店に繰り出して失敗するのもしんどい。

 経費で落ちるとはいえ、博打ばくちは打ちたくないものだ。

 なのでホテルに着くまでに食料を調達せねばなぁと、ぼんやり移動中に考えていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...