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調査・皇路北店
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しおりを挟む西店を出てタクシーで30分と少し、皇路北店へと到着した。
「嬉野さん、お疲れさまです」
「お疲れさま、松井フロア長」
にこやかに出迎えてくれたのは白物フロア長の松井旭(35)、彼は本店で暴力事件に巻き込まれ異動させられたという物騒な経歴を持っている。
と言ってもハラスメント上司に立ち向かい一方的に殴られただけ、相手は降格となり松井くんは北店コーナー長扱い…つまりは事実上の栄転だった。
松井くんは能力は高いのに昇進には関心が無かったらしくスカウトしてもずっとヒラで、けれどその騒動後にきちんと昇進試験を受けてフロア長に昇進した。
その際の面談はもちろん僕が担当したのだけど、「心変わりの理由は?」と聞けば「人に勧められて」と答えたから信頼できる人に出逢えたのかもしれない。
最近の調子を聞き取って面談代わりとして、「そう言えばさ」とお決まりのことを尋ねてみることにした。
「松井フロア長は、浜田くんとは面識あったかな?」
「いえ、入れ違いですね。僕が昨年4月末にこっちに来て、浜田さんは末から本店勤務だったはずですが」
「そうか、ならどんな人だったかは知らないかな」
知らなかったとしても僕がこんなに聞き取りをしてしまったらそれはもう『浜田さんに何かあった』ことを示しているのだが…信頼できる人にしか聞いてないし各人に秘密だと念は押したから大丈夫であろう。
さて信頼できる松井くんは「うーん」と頭を捻り、
「本店のスタッフから評判は何となく」
と苦笑いした。
松井くんは料理やおもてなしが得意で、よくホームパーティーを開催して同僚を呼んでいるそうだ。
ならばその時に耳にしたのだろう、社員の横の繋がりはどんどん作っておいて欲しいものだ。
在庫の移動もお願いしやすいし、転勤した時に知り合いが居るというのは心強い。
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