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嬉野家の悩み
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しおりを挟む娘の様子がおかしい、ある日妻がそんな事を言うものだから夫である僕・嬉野直人(51)はテレビの音量を小さくしてダイニングに掛け直した。
「どういうこと?」
「なんかね、ため息がちというか…元気無いの」
「…学校で何かあったのかな」
「そうでもないみたい。友達の事とか細かに教えてくれるし、学校もちゃんと行ってる」
僕らの娘は18歳の大学生、家族同士の仲は良いし兄弟仲も良い方である。
僕は家電量販店・ムラタの本社人事部所属で、現在は出生地である兵庫県に住んでいる。
そこを拠点に近畿地方の北部店舗を巡店しながら、管理職候補を見出したり昇進・中途採用面接を行ったりしている。
「…となると…バイト先?」
「その線が濃厚。あの子、流行りのSNSとかゲームは興味ないみたいだし、リアルな対人関係ならそこかな」
「…巡店してみようか」
「職権濫用にならない?」
「大丈夫だよ、通常業務の隙間にちょこっと聞き取りしてみる…口が固い人にね」
娘・葵はムラタでレジのアルバイトをしており、僕の妻・百合子(46)もまた勤続26年の社員であった。
僕はちょうど今週の巡店予定に皇路市一帯の店舗が入っていたので、葵の勤務地である本店に多めに時間を割こうと計画を練る。
僕の仕事は移動時間がほとんどで、近畿北部と言っても滋賀方面などはさすがに泊まりで周っている。
たまに関東の本社に出向いて報告や会議をして戻っては移動して、自宅でゆっくりできる時間が少ないだけに子供の不穏な様子を聞けば表情が暗くなった。
「…取り越し苦労ならそれで良し…うん、親バカだと思われるかな…まぁ行ってみよう」
葵にレジのアルバイトを斡旋したのは僕なのだ、少しでも様子を見たいと融通した先で何があったのか。
もし職場いじめでも見過ごしていようものなら、人事である自分の目も曇っていたことになる。
なんだか宝探しの気分だね、僕はスケジュールを確認してから早めに就寝した。
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