どうも、ネヤガワラです。

ウズ編・瀬戸内ひとり旅

13

　夜は珍しく志保から寄り添ってくれて手を繋いで眠り…翌朝、お互いの帰宅目安をしっかり伝え合い、それぞれの職場へと出かける。


「行ってらっしゃい」

「行ってくる…晩飯までには終わるから…気ぃつけてな」



　さて劇場出番まではまだ３時間ある。

　俺は身なりを整え相方と共に所属事務所へ赴き、チーフマネージャーに降板になったイベントのことで謝罪した。

　普段生意気な俺たちが頭を下げるもんだから社員さんたちはひどく驚いていたが、まぁまぁと座らされ今後の方針を詰める。

　そして芸風は変えずともせめて表現はテレビ向けにしようとのことで話し合いは決着した。

　「何かあったのか」と問われれば「いえ」と答える。

　ただ志保も言ったように関西ローカルのレギュラーだけでは食っていけないしもっと有名になりたい。

　熱意が通じたのか全国放送のネタ番組のオーディションを数個回してもらえることになった。

　根が真面目じゃないから心が入れ替わったなんてことは言えないけれど、いつまでもダラダラ走っていられない。

　志保が離れて行くリミットができてしまったのだ。

　セックス中の戯言たわごとだと流すこともできるけど、冷静な彼女のことだからきっと頭はハッキリしていたろうし忘れていないはずだ。



「ナリ、ばんばん仕事してさぁ、早う結婚したいな」

「うん、俺もレギュラー決まった時点でプロポーズしてもうたし…各所への配慮、してこうか」

「よくよく考えりゃ当たり前のことやんな。俺ら大人やのにな」

「うん、けど劇場やったらええんちゃう？」

「んー…」


　とりあえず明日はテレビ局でネタ見せだ。

　緊張の反動でその後の劇場出番は際どいものになってしまうかもしれないが…ファンが喜んでくれるなら仕方ないだろう。