どうも、ネヤガワラです。

茜琉ぴーたん

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ウズ編・瀬戸内ひとり旅

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 表面上は和気藹々わきあいあいと過ごすこと数分、外の駐車場に車の音がした。

 そして玄関の扉と足音、

「ああーー⁉︎平良たいらくん⁉︎なんで⁉︎え?え?」

と奥から尋ね人の叫びが響き、甥っ子がそちらへトコトコと駆けていく。

「志保!やっと見つけた‼︎」

 見慣れぬ土地に見慣れた顔、これほど安心感を得られるものが他にあるだろうか。

 しかし感動の再会に盛り上がる俺とは裏腹に志保は

「え?仕事は?なんで家が分かったん?」

と冷静だった。

「ん、ちょっとな…冒険してん…あ、お母さん、お久しぶりです」

「へぇ⁉︎なに、用事やった?」

 甥っ子を抱きかかえた彼女は目をまん丸にして驚き、それに驚いた甥っ子が近づこうとする俺を真剣な顔で嫌がっている。

「志保、なんでメール返さへんの」

「ん?何か送ってた?……あ、ほんまや…ごめんね、ここ私のケータイ使われへんくて…通信エリアに入ってケーブル挿したらドッとメール受信すんのよ」

「……ハァ⁉︎嘘言いなや、俺のは使えるわ」

「うん、私のキャリアが特別電波弱いねん……ほら、見てみな?」

 確かに彼女のスマートフォンの画面左上には『圏外』の文字、今この機体は通信機能を失っていた。

 昨夜俺にメールを送ったのは実家へ向かう車の中で、そこから電波の入らない地域に入ったために音信不通が続いていたらしい。

「……この令和の時代にそんなことがあんのか…?不便すぎるやろ」

「しやからみんな大手を使うんよー、この裏の山とかが良うないんかもね」

 志保の使う通信会社の基地局が増えたらここでも電波が入るようになるだろうか。

 カーナビのワンセグテレビが映らなかったり田舎では往々にしてこんなことがいまだに起こるみたいだ。

「にしてもよ、車で動いとったなら…どっかでメールチェックくらいするタイミングあったやろ?」

「運転席座ってからは見てへんし…お義姉ねえちゃんに気ぃ付けてたから歩くときもわざわざ見てへんかった」

「お、音信不通になってんぞ、気持ち悪うないんか?」

「いや、どうせ休みに仕事の連絡は来んし…大阪でもメールは手動受信やし。ケーブル繋いだら1日分がドサッと入って来んねん。やからいつも言うてるやん、急ぎの用は電話してって」

「その電話が通じひんかってん」

「そらごめんて。でも帰省することは前もって言うてたやん?あと今日は移動と仕事で一日潰れてたはずやろ?何が問題よ、」

「………」


 そう俺は理由を聞かれるのが嫌で、仕事が飛んだことをまだ彼女に伝えていないのだ。

 さらに彼女の帰省の理由も内容もよく聞いていなかったことがそもそものミスであった。

「ん?」

「……すまん。諸事情あって無くなってん…志保がこっち帰る理由もろくに聞いてへんかったから……何や怒らせたか事故でもあったか思うて…飛んで来てもうた」

「…いつ?始発で?」

「昨日の晩や…こっちのホテル泊まって…」

 目元から頬、口元まで手でくしくしと擦りバツが悪そうに目を逸らす俺を、彼女の一家が揃って見つめてくる。
 
「…可愛らしい…健気けなげな、」

「ほんまなぁ、たかが帰省を追いかけてきたんか…ドラマじゃな、」

「疲れたじゃろ、上で横になりな、」

「………」
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