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ウズ編・瀬戸内ひとり旅
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しおりを挟む翌朝。
俺は夕飯を食べてなかったことを夜中に思い出し、明け方からモーニングの開始時間までは空腹と闘う辛い時間を過ごした。
特に名産品が並ぶわけでもない、ビジネスホテル然とした朝食バイキングでコーヒーとトースト、スクランブルエッグを適当に盛ってもしゃもしゃと頬張る。
「……せや!」
満腹でもたらされた御機嫌を共有する相手もおらず、持て余した俺はテーブルの向かいの空席にスマートフォンをセットした。
そして、タイマーであたかも「食事を志保に激写された」風な写真を撮影して、
「ええやろ」
と言葉を添えて相方へ送信してやった。
「………むなし…」
スマホを握り締めたままテーブルに突っ伏すと、皿とカップがカチャンと音を立てる。
そして数分後、着信音替わりの振動を手に感じてがばと顔を上げると、相方から
『ええな』
と気の無い言葉と、寝起きの重そうな瞼のアップが返って来ていた。
「お前かい…」
だがこんな返事でも今の自分にはじわじわと染みて、大阪に帰ったら少しはコイツに優しくしてやろうと心積りをしたのだった。
さて何度画面を見返しても待てど暮らせど届くことのない返事、俺は虚しいこのメールアプリごとサブページへ追いやってしまう。
そして腹を括って、ホテルのチェックアウトをしにフロントへ体ひとつで向かった。
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