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おまけ(全9話)
ブルー・ドラゴン 6
しおりを挟む唯さんの病室を出て、言われた新生児室へと向かう。
大きな窓の向こうには近日中に生まれた赤ん坊が数人、透明な台車みたいなのに乗せられていた。
『葉山唯ベビー(男の子)』
数いる赤ん坊の中でも、そう名札の付いたカゴに真っ先に目が行く。
不思議だな、引き寄せられるように足がそちらに向いた。
「……かわいい」
まだこの世に生まれて1日の、小さくてしわしわな命。
「かわいい…あ、かわいい」
僕はそれ以外の語彙を失くし、しばらくの間そこで立ち尽くし泣いた。
懺悔の想い、労いの気持ち、祝福、初対面の感動。
通りかうナースさんも新生児室の助産師さんも、僕を見てギョッとなり苦笑いしていた。
「ユイさん、」
「ん…おかえり、どやった?う」
「可愛かったです」
「ちの子……あ、そら良かった」
食い気味に応えた僕に唯さんも苦笑い、穏やかに微笑む。
「もうお乳は飲んだんですか?」
「初乳は舐めさせたよ。明日から母子同室やな…まだ妬いてんの?」
「いいえ…授乳してるとこ、早く見たいです…あ、変な意味ではなくて。一緒に居るところを、見たいです」
「…父性が舞い降りたみたいやな」
僕は自信を持って、
「はい!」
と応える。
まだどちらに似ているとも判別できない、でもどちらだって良い。
僕は面会時間いっぱい新生児室と病室を往復した。
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