枯れかけのサキュバス

おまけ（全９話）

ブルー・ドラゴン 3

「龍ちゃん、おいで」

項垂れる僕に手招きして、唯さんがソファーへと呼ぶ。

　そしてポンポンと太ももを叩き、

「膝枕したる、おいで」

と微笑んだ。

「あ、ありがとうございます」

「久しぶりやんな、遠慮せんと言うてええんやで」

「いえ、負担をかけてはいけませんから…」


　ずいと張り出た腹、僕の唯さんを占有する悔しさの塊。

　そこに頬を当てて、唯さんの深い呼吸に自身のそれを合わせる。

「頑張り過ぎやで…我慢も」

「大切な、体ですから…」


　僕は唯さんの妊娠が判明した日から、禁欲生活に入っている。

　安定期に入ればセックスはして良いと知ってはいたが、唯さんがそんな空気を出さないので控えていた。

　そうすると僕だけが気持ち良くなるのも気が引けて、自慰行為も意義を感じなくなってしまい…今に至る。

「抜いたろか？」

「いえ、ダメです…胎教に悪いので」

「ははっ…そうかぁ…ええお父さんやね」


　耳の上、うなじ、眉尻、小さな手で撫でられて安心する。

　偉そうなことを言いはしたが、僕以外の男が存在する場で二人のラブタイムを披露したくないというのが本音だ。

　馬鹿なことは分かっている、でも焦がれた唯さんと二人きりの時間が終わってしまう。

　刻一刻と迫るその日、僕はどんな表情をしているのだろうか。

「あ、蹴った」

「元気な子やで」

「…生まれたら、すぐ、会いに行きますから」

「うん…できれば、可愛がってやって欲しいなぁ」

「…無事に、出て来ると良いですね…」