枯れかけのサキュバス

おまけ（全９話）

ブルー・ドラゴン 1

　入籍して２周年を過ぎ、僕の妻の唯ゆいさんは現在妊娠中だ。

　もう少しで産前休暇に入るので、色々と準備をしている。


「龍ちゃん、これ、容いれもん取ってくれへん？」

大きな腹を抱えて、唯さんが僕を呼び寄せた。

　彼女はただでさえ身長が低いというのに、吊り戸棚の中の食品保存容器を取ろうと背伸びしている。

　平常時だって届かないくせに、それはパフォーマンスに近いものがある。

「ユイさん、背伸びしても届かないでしょ」

「…取りたい、いうアピールやんか。何もせんともの頼むんは気ぃ悪いやろ」

「アピールなんてしなくて良いのに。…はい、どうぞ」

「おおきに、さすが龍ちゃん」

唯さんはフタを開けて、作り置きのおかずを詰めていく。


　お腹が膨らんで、唯さんの活動量は減った。

　体重に占める子供の重さが大きくて、どうしても動くのが怠いらしい。

「ユイさん、里帰り…やっぱやめません？」

僕は思い切って、何度目かの質問をしてみる。

「あ？やめへんわ、阿呆か」

　そして今日も、唯さんの返答は同じだった。