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11月・嫉心のサキュバス
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扉の先には、ポニーテールで肩出しチュニックの様なワンピースタイプの水着を纏った唯が、浴槽のフチに腰掛けて待ち構えていた。
大きな胸を敢えて隠し、黒地のレースが白い肌を際立たせている。
「水着?…可愛い…♡普通の服みたいですね」
「今年は着てへんかったからね、ここ座って」
唯は立ち上がり、フチをペチペチ叩いて葉山に入れ替わりに座るよう促した。
「はぁ…?」
風呂なのに着衣、そして初めて見る水着なので、正直葉山は興奮している。
もしかして跪いて口淫で悦ばせてくれるのかも、と期待しないこともない。
しかしその淡い期待は秒で立ち消えた。
ニッコリ微笑む唯の手に、レディースシェーバーが握られていたからだ。
理美容品売り場に立っていたのだから男の自分でも見たことがある、おそらく一番メジャーなメーカーの物である。
「あ、ユイさん、ちょっと、どこする気?」
「ん?コレはどこ用?」
唯はヘッドを見せて、葉山の商品知識を試す。
これは男性のシェーバーやバリカンと似た形状の刃、しかしフェイス用ではない。
「腕と脚…」
「うん、ここな、コームつけて、」
そこまで言って電源を入れると振動音が浴室に響き、ジリジリとその腕が葉山のすねに迫る。
「あ、ちょっと、ユイさん、」
「動かんとってな♡」
長さを揃えるためのコームを介し、葉山のそれなりに男性らしく生え揃ったすね毛が一定の長さにカットされていく。
片脚、もう片脚、右脇、左脇と繰り返し、唯はヘッドを取り外した。
「腕はそんなに生えてへんからええね」
軽く濡らした両脚ににボディーソープを塗り、別のヘッドを取り付けて葉山に見せる。
「これ、もう廃番やねんけど、長う使うててな。わかる?」
「うん……?」
葉山の世代では見たことがない、3つの円がピラミッドのように重なった特徴的なヘッド。
男性用のシェーバーにも似たデザインはあるが、付いているのは刃ではない。
「なに……!あ、あ、あきません、ユイさん、だめっ、嫌やっ」
「うん、ええ子にしててな」
電源を入れると割と大きなモーター音をあげて、3つの円の中の機構がそれぞれ縦に回転し、円自体も横回転を始める。
剃毛用ではない、これは脱毛器であった。
「風呂用脱毛器か、うわ…嫌やっ、しばらく生えへんっ」
「じぃとしとらんと、うちでもたまに皮膚挟むよ?ええ子にな、」
「あかんて…」
肌に当てくるくると動かすと振動でソープが泡立ち、毛を挟んでは毟り取っていく。
「いだいっ!や、いだいっ!」
泡で毛を起こし挟んで抜く、そこまで痛くないのが売りの商品だが、それなりに密度が濃いので葉山はいちいち悲鳴を上げた。
「まばらになったらそこはシェーバーで剃ろうな、はい次、左脚ー」
「あ、ユイさん、僕何か、いだいっ!あ、怒らせるような事、痛っ、しましたか?ただの興味にしては、手間かけ過ぎでしょう、途中で飽きるパターンですかぁ?いだいぃ!」
ぶちぶちと毟りながら、時折ただちぎっては、葉山の両脚がつるつるになっていく。
「んー、なんか…んー…」
ここまでされる前に逃げれば良いのに、と唯は内心思っているが、される覚悟があるからこんな日に家に来ているのだろう、と良いように解釈していた。
毛の混じった泡が浴室の床にポテポテと落ちて両脚の脱毛が済み、抜きそびれた毛をT字剃刀でキレイにしてやる。
「あら、龍ちゃん、つるすべや♡どこに出しても恥ずかしない美脚やで、ぷぷ」
「笑うてますやん……恥ずかしい…もう、終わりですか?」
「これは何用だ?」
唯は新しいヘッドを葉山に見せてやった。
「書いてあります……脇用、脇は…僕泣いてしまうかもしれませんよ…」
「慣れたやろ。龍ちゃんサウナとか行かへんし、キレイになったら清潔感あって接客にもええと思うけどね」
「接客で脇は見せへんっ!いや、こう…男のさ、プライドじゃないけど…ツルツルって…子供みたいでさ……ぅ、いいだいっ!わ、あ!いだいっ、も、ユイざんっ!やめでぇ!」
脇用とて仕組みは同じ、毛根が太いほど抜けやすいが痛みも伴う…葉山はもはや雄叫びを上げ、地団駄を踏んで気を紛らわす。
「湯船に落ちんなよ、ほら、とぅるとぅる♡はい、左ー」
「は、あ、ア!いだいっ、あ、痛いよ、ユイさん、これはもう暴力だよっ、あ、いだい…あ、ぁー」
「うん、そうかなぁ、キレイになるには努力は必要やんか。はい、カミソリ当てるよー…」
脱毛器の電源は切られ、ショリショリと抜け遅れが剃り落とされた。
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