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11月・嫉心のサキュバス
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しおりを挟む最寄りのスーパーで安い豆腐と鶏団子鍋セットを買い、唯の自宅へ帰る。
お互い部屋着に着替えてリラックスし、夕食の準備に取り掛かった。
卓上IHに鍋をかけ炊ける間に唯が葉山リクエストのタレを作る。
特に珍しいこともない、出汁醤油と酒を煮切って薬味を混ぜたものだが、葉山はこれが好きらしい。
「あいよ、熱いから気を付けてな」
「ありがとうございます、これ付けたら何でも食べれる…」
「さよか」
唯も野菜を掬ってふぅふぅと吹きながら食べ始める。
「ユイさん、その『さよか』って、守谷フロア長の口癖移ってませんか?」
「あー、フロア長よう言うてんな。でも普段使いの言葉やからしゃーないやん」
「浮気はあきませんよ」
そう意地悪そうに言い逃げする葉山に聞こえないくらいの声で、
「…誰が言うてんねん」
と唯が呟いた。
「なんですか?」
「んーや…龍ちゃん、これ、ニンニクの芽食べれる?」
「はい、食べないなら貰いますよ」
鍋の中から5本程拾って、唯は葉山の皿へ入れてやる。
「ん、精つけや♡」
「は?…うわやだ、また…嫌だぁ…」
本日は唯の排卵日、つまりは危険日週でもっとも彼女の気性と繁殖欲が荒ぶる日であった。
安全に配慮して挿入有りのセックスはしない、と取り決めているので、この日は大概葉山を虐める日になる。
葉山も過去の経験からある程度は覚悟しているが、8月の同日は2時間弱で5発抜かれ死ぬ思いをし、アナル開発までされかけたため、以降は刺激しないよう労って過ごしたりしているのだが。
今夜は仕事の話から入ったし、穏やかに見えたから大丈夫だと思ったのだが違うようだ。
唯は残りの具をさらって、冷やご飯と醤油を鍋に投入した。
「龍ちゃんもいる?」
「少しだけ」
「ん、」
煮立った米に溶き卵を入れ、蓋をしてしばし待つ。
「雑炊♪雑炊♪やっぱ米やな」
「ユイさんはご飯党ですよね」
鼻歌まじりに楽しそうに出来上がりを待つパートナーを、葉山は子供を見守る様な愛しい眼差しで見つめた。
「日本人やからな、パンも好きやけど…あ、知ってるか?京都と神戸はパンの消費額が多いらしいわ。うちもどっちも好きやな、ふふ」
「ユイさん可愛い」
葉山は満足げに頬杖をついて、帰りの車内でのやり取りは払拭できただろうかと少し安心する。
「おおきに、できた♡食べよ、熱いから気ぃつけてな」
「ふふっ、子供じゃないんですから、あちっ」
「ほらぁ、ははっ♡」
大人と子供と上と下と、時により日によりコロコロ変わる立場と関係性。
3年の空白を埋めるように、二人はお互いの知らない部分を自然に探る。
「美味い、いろいろ出汁が出てるな」
「鶏団子ですかね?今度鍋も食べに行きましょう」
「鍋な…そういや今年は忘年会あんのかなぁ、松井さんが幹事やんのが恒例やけど」
「12月半ばとかですかね、……ごちそうさまでした」
葉山は茶碗に半杯の雑炊をユイのペースに合わせて少しずつ口へ運び、彼女と同時に器を空にした。
「ん、ごちそうさま、さて龍ちゃん、一緒にシャワー浴びよか。したい事あんねん」
「うわ、なんですか」
「ないしょー、お湯張ってくるわ。呼んだらおいでな、」
鍋をシンクへ置いて、ひとり風呂場へ向かう唯の背中を不審がりながら葉山は見つめる。
そして戻ってきた唯はそのまま寝室へ入りクローゼットを漁り始め、パジャマと何かを携えてまた風呂場へ入って行った。
パジャマと下着を準備して5分ほどの待ち時間を葉山が倍以上に体感していると、浴室の扉が開く音がして唯の声が響いてくる。
「龍ちゃんもおいでー!」
「……はーい…」
脱衣所には彼女の姿はなく、部屋着と下着が抜け殻の様に洗濯カゴに入っていた。
葉山は部屋着を脱ぎ落とし、大きなため息を吐いて恐る恐る浴室の扉を開ける。
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