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10月・展開のサキュバス
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しおりを挟む翌朝、毎度のように唯はむくりと起き上がり、寝ぼけ眼のままで眉を描きに化粧BOXを開ける。
アイブロウの横には件のローター、昨日はコイツのせいで大変に気を揉んだ…いや、自分が撒いた種なのだが。
「ふん」とアイブロウを拾って眉を描こうと鏡を見た瞬間、
「とぅふっ⁉︎…」
素っ頓狂な声を上げてまじまじと見入る。
そしてまだ寝ている葉山に掴みかかり、
「おい!こら、起きんかい!」
と輩のように叩き起こした。
「あー、うわっ!おはようございます…はは、ビックリした。僕が書いたんだった♡」
悪びれることなく、むしろ嬉しそうに見つめる先、唯のおでこには葉山が油性ペンで書いた「りゅう」の文字があり…眉間のシワのせいでガタガタになってはいるが、しっかりと読みとれる。
「お前…ココだけか?他にも書いてへんやろな⁉︎…落ちんのかコレ?」
「オイルで落ちますよぅ…たぶん。ふふっ、マーキングですよ…あ、やだ♡ユイさん恐い」
「ふざけるなよ……お前も書いたるわ、尻出せコラ!」
「嫌ですぅー、はは♡」
部屋の中で鬼ごっこをしながら、
「身体中に書いて、落ちるまで閉じ込めておきたいですね。割と本気で思っちゃいましたよ」
と、葉山は本音をつい漏らす。
「えぇ……身体に落書きとか許せるタイプか?」
「僕に書かれるのでなければ。『僕専用』とかおへその下に書いていいですか?」
「は……ふむ…」
妙な提案だが唯は真顔で足を止めて、口元に手を置いて少し考えた。
「………龍ちゃん、それで気が収まる?楽になるなら書いても…ええよ」
「え」
殴られると思っていた葉山は意表を突かれて、実に目をまんまるにして驚く。
唯は「むぅ」と口をへの字に曲げているが、頬を染めて真っ直ぐ葉山に対峙していた。
「龍ちゃん…書いて?」
「は、い…」
青年はペン立てから油性ペンを抜いて来て唯の前に跪き、
「ここ、捲っておいてくれますか」
とお揃いのパジャマの腹を手で持たせズボンも広げさせてからペンを走らせる。
「龍ちゃん専用」、葉山は本当にヘソの下にそう書き、ニコニコとペンを収めてその腹を抱きしめた。
そして立ち上がり唯にペンを持たせ、
「僕にも書いて下さい」
と懇願する。
「おぅ」
彼女が容赦なくパジャマを捲りヘソの下に「ユイ専用」と書き殴れば、葉山はえらく感動して、大きく息をしながら小さな体を再度抱き締めた。
唯は青年の肩に手を添え、そんなに嬉しいもんかと甚だ疑問ではあるがポンポンと叩いて、
「ごはんにしよか」
と間抜けな顔で笑うのだった。
つづく
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