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エピローグ・失策のサキュバス
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しおりを挟む「まぁ帰りも、電車乗るフリして後を尾けましたし、あらゆることはしました。お母様はゴルフがお好きなんですね」
「は」
庭の倉庫の前に置いてあるパターセットを見たのだろうか、「母が」と言い当てる辺り、きっと明るい時間帯にも自宅を訪問したのだろう。
唯は一応手元にスマートフォンを握り締めて有事に備えていたが、お互い素性がバレているので話し合いで解決するだろうとは踏んでいた。
だがコイツは予想以上にヤバい奴かもしれない。
それも恐怖というより、「なぜここまでするのか」という疑問ばかりが募る。
「…ユイさん、セフレでもいいです、お側に置いて下さい…」
まぁ断られることも充分想定していたのか、聡明な青年は最近覚えたであろう単語を使って更に自身を売り込む。
「はぁ?意味分かって言うてんの?」
「はい」
「……お前、そんなにうちが良かった?他探した方が早いよ?」
「ユイさんがいいんですよ、初恋です」
「恥ずかしい事言いなや…うちにええように使われるんやで?うちが言うのもちゃうけどさ、男としてどないやの?」
「構いませんよ、好きな時に呼んで下さい。僕ね、ムラタのバイト募集見てすぐ担当さんに声かけて、遠くから見てたんです。パートの方から情報を少しずつ聞き出して…本名を知りたくて。そしたらユイさんはユイさんだった、すごく嬉しかった…最初から本名を教えてくれてた」
「大した理由は…いや、まぁお前可愛いし、あそこまで食い下がって聞いてくるから…」
葉山は、ぼちぼち「この女は押しに弱い」ということに気づき始めている。
割り切った関係ばかりで、ここまで相手からグイグイ来られることが無く不慣れなのであろう。
「ユイさん、お願いです。お好きな時に、僕を使ってください。あんなナンパばかりしてると、いつか危ない目に遭いますよ。僕を少しでも好みだと思ったから連れて帰ったんでしょう?ねぇ、ユイさん、誰にも言いません。店では馴れ馴れしくしませんから、ねぇ、ユイさん」
説得に次ぐ説得、子犬のような目つきで縋られ、唯の意志がポッキリと折れてしまった。
「んー………、ほんまにセフレやで?二度と家に来んなよ?」
「ああ良かった、聞いてくれなかったらどうやって脅そうかと…」
「お前さぁ…まぁええわ…名前何やったっけ?」
「龍、」
「龍ちゃん、ちょっと待ってな、そこ、座席後ろにずらして、」
そう言って唯は運転席も目一杯前へスライドさせる。
広くなった運転席の後ろへ葉山を座らせ、一旦外に出た唯はその葉山の膝の上へ再度乗り込んだ。
「ユイさん、」
「しー、」
ヒールパンプスを脱いで太腿へ騎乗、首に手を回し顔をしっかり見ながらぺろぺろと唇を舐めると、薄暗い駐車場照明の下でも葉山の照れている様子はよく見える。
「あの、」
「うち、今生理やから。抜きだけな」
そう言って唯は膝の間へ降りてしゃがみ込み、さっきから主張の激しいモノを解放して触り、ねぶり、搾り取ってやった。
監視カメラは避けたし壁に前向き駐車だし、唯なりの配慮はしたつもりだったが、初めての半屋外射精は葉山にとって凌ぎきれない辱めだったようだ。
「龍ちゃん、撮るよ。ダブルピースせな、はいチーズ!」
白濁液に塗れた局部を出したまま上気した顔でスマートフォンのカメラを向けられ、葉山は笑うことなど出来ず慌てた表情で写真に収まってしまう。
「会社で親しげにしたらコレ待ち受けにしたるからな」
こんな暗がりでフラッシュも焚かずに撮った写真などまともに写ってる筈はない…これは唯の趣向返し、脅迫返しのハッタリであった。
「…しないってば…もう…ユイさんの意地悪…」
しかし葉山は幸福そうに笑い、この日から二人の爛れた関係が始まる。
跨がる日、抜かれる日、葉山がこの流れの規則性に気づいたのも早かった。
仕事中にも唯の様子を観察し、カレンダーを見ながら次に呼ばれる日を予測してはワクワクしていたものだ。
そして突然の別れを経て、葉山の執念をもって再会することになる。
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