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エピローグ・失策のサキュバス
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しおりを挟むホテル選びは唯が適当に行い、明るくて綺麗な写真の部屋に入ることにした。
靴を脱いだら視界から消えた唯に葉山は口を一文字に結んで笑いを堪えて、少しイラッとしながらもベッドへ誘導し室内のテレビの音量を下げた。
「…あの…今更なんですけど、お名前…教えてください」
葉山はベッドに腰掛け、部屋をウロチョロする唯を目で追う。
彼女はタオル・スキン・飲み物などをベッド周りに集め、いやらしい事をするための準備をしていたのだ。
「へ?あぁ、ごめんな、内緒。お姉さんでええよ、」
「えぇーずるい…、」
何も悪用しようなどというつもりではない。
盛り上がって感極まった時に相手の名前を呼びたいと青年は思ったのだ。
残念ながら、ひとりの相手に執着しない唯においては名前など合っても無いようなもの、どうせ翌朝にはさっぱり忘れている。
今回は葉山が先に名乗ってしまったので唯はフェアじゃないなと思いながらも、適当に偽名を伝えるか、渾名を教えてやるか迷っていた。
葉山があまりに純なので、最中に虚像を呼ばせるのが可哀想にも思えたのだ。
「その、僕本当に初めてで、何をどうしたらいいのか…不手際があったらすみません…」
青年が思い詰めた顔をして目を伏せるので、準備を済ませた唯が葉山の脚の間に入り、ベルトのバックルに手を掛ける。
「……真面目やなぁ、楽にして?」
「!」
目を剥いて、ジーンズのボタンが外れファスナーが下がっていく様子を見守る葉山、手間を掛けさせまいと上着とTシャツは自発的に脱ぎ、汗臭くないかこっそりと匂いを嗅いだ。
ジーンズを脱がせパンツ一丁にさせたが股間は興奮よりも緊張が勝っているようで、来るまでの勢いはどこへやら、今ひとつ盛り上がりにかけていた。
「ふむ」
唯はサマーセーターを、ハイウエストのワイドパンツも次々と脱ぎ落としてキャミソール下着姿の女体を葉山に見せつけてやる。
身長こそ低くアンバランスだが、胸も尻もくびれた腰も肉感的で女性の体なのである。
「…どう、うちで勃つ?」
「あ、ちょっと、待って下さい…いきなりは刺激が強いです」
「女に恥かかせんとって?龍ちゃん」
それでもムクムクと膨張が見られたので、唯は満を辞して葉山のボクサーをずり下げ、モノを確認する。
「龍ちゃん…見かけによらず漢らしいもん持ってるやん♡うわぁ、ふふ」
見かけ通りのモノとはどんなのかは分からないが、葉山は自分のモノが褒められていることだけは理解し、安堵した。
この後…唯主導で葉山青年は無事童貞を捨てた。
初めての体験に戸惑いながらも葉山は正直な反応を返し、その喘ぎ声は裏返り、その艶かしさはどちらが女か唯が自信が無くなるほどで。
これまで貪った男の顔など唯は覚えてはいないが、それでもこの青年が可愛さも苛めたさも段違いにトップなことは明らかだった。
名前を呼ばれると情が移ってしまう、やはり教えなくて正解だと唯は確信する。
案の定葉山は最中に「名前くらい教えて下さい、気持ちの持って行き場が無い」と請い、しかし唯は「好きな名前で呼んだら?」と突き放す。
「……」
好きな女優の名、好きなキャラクターの名、昔好きだった同級生の名?
葉山は血が上った頭で思考を巡らせるも、何と呼ぼうがしっくり来ないし、適当に思いつきもしなかった。
「……ねぇ、偽名でもいいから、呼び方決めて下さい…縋る先が欲しいんです…」
頭上にはさっき出会ったばかりの年上のお姉さん、名前も教えてくれない意地悪でエッチなお姉さん。
温かい肉襞、締め付ける心地よい圧迫感、先端のイイところに何か当たる感触、味わったことのない「快感」と呼ぶには物足らないほどの高揚感に悶える。
「かわいい、」
葉山は荒い息遣いの唯を見上げては目を閉じ、直視もできないけど脳裏に焼き付けたくてまた目を開ける。
前後から縦運動に変わり、葉山が一層喘ぎだした時、唯がその目を見つめて言葉を落とした。
「ユイ」
「へっ?」
「ユイや、そう呼んで、龍ちゃん」
葉山の艶に当てられたのか、彼女は遂に名を教え…
「ユイ、さん」
これが偽名でも渾名でも、虚像かもしれないがどうでも良い、葉山は下唇をぎっと噛み、堰が切れたように賜った名を紡ぐ。
「……ユイ、さん…、ユイさんっ」
葉山は犯されているが如く歯を食いしばり、甘美な遊戯の終わりを唯に知らせた。
時間にすると挿入は短かったが前戯も含めればそこそこ楽しめる内容だった。
熱い滾りをスキン越しに感じ、唯はこの青年の大人への一歩の助けになれたことを嬉しく思った。
しかし腰を浮かせてするんと葉山を抜き、先ほど同様にティッシュでお掃除をしたらサッとショーツを履いてしまう。
そして葉山のボクサーを拾い上げお疲れモードのモノの上にかけると、
「シャワーしてくるわ」
と言い残してスマートフォンだけ持って風呂場へ向かってしまった。
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