上 下
87 / 100
エピローグ・失策のサキュバス

79

しおりを挟む

 ホテル選びは唯が適当に行い、明るくて綺麗な写真の部屋に入ることにした。

 靴を脱いだら視界から消えた唯に葉山は口を一文字に結んで笑いを堪えて、少しイラッとしながらもベッドへ誘導し室内のテレビの音量を下げた。

「…あの…今更なんですけど、お名前…教えてください」

葉山はベッドに腰掛け、部屋をウロチョロする唯を目で追う。

 彼女はタオル・スキン・飲み物などをベッド周りに集め、いやらしい事をするための準備をしていたのだ。

「へ?あぁ、ごめんな、内緒。お姉さんでええよ、」

「えぇーずるい…、」

何も悪用しようなどというつもりではない。

 盛り上がって感極まった時に相手の名前を呼びたいと青年は思ったのだ。

 残念ながら、ひとりの相手に執着しない唯においては名前など合っても無いようなもの、どうせ翌朝にはさっぱり忘れている。

 今回は葉山が先に名乗ってしまったので唯はフェアじゃないなと思いながらも、適当に偽名を伝えるか、渾名あだなを教えてやるか迷っていた。

 葉山があまりに純なので、最中に虚像を呼ばせるのが可哀想にも思えたのだ。

「その、僕本当に初めてで、何をどうしたらいいのか…不手際があったらすみません…」

 青年が思い詰めた顔をして目を伏せるので、準備を済ませた唯が葉山の脚の間に入り、ベルトのバックルに手を掛ける。

「……真面目やなぁ、楽にして?」

「!」

目を剥いて、ジーンズのボタンが外れファスナーが下がっていく様子を見守る葉山、手間を掛けさせまいと上着とTシャツは自発的に脱ぎ、汗臭くないかこっそりと匂いを嗅いだ。

 ジーンズを脱がせパンツ一丁にさせたが股間は興奮よりも緊張が勝っているようで、来るまでの勢いはどこへやら、今ひとつ盛り上がりにかけていた。

「ふむ」

唯はサマーセーターを、ハイウエストのワイドパンツも次々と脱ぎ落としてキャミソール下着姿の女体を葉山に見せつけてやる。

 身長こそ低くアンバランスだが、胸も尻もくびれた腰も肉感的で女性の体なのである。

「…どう、うちで勃つ?」

「あ、ちょっと、待って下さい…いきなりは刺激が強いです」

「女に恥かかせんとって?龍ちゃん」

それでもムクムクと膨張が見られたので、唯は満を辞して葉山のボクサーをずり下げ、モノを確認する。

「龍ちゃん…見かけによらずオトコらしいもん持ってるやん♡うわぁ、ふふ」

 見かけ通りのモノとはどんなのかは分からないが、葉山は自分のモノが褒められていることだけは理解し、安堵した。



 この後…唯主導で葉山青年は無事童貞を捨てた。

 初めての体験に戸惑いながらも葉山は正直な反応を返し、その喘ぎ声は裏返り、その艶かしさはどちらが女か唯が自信が無くなるほどで。

 これまでむさぼった男の顔など唯は覚えてはいないが、それでもこの青年が可愛さも苛めたさも段違いにトップなことは明らかだった。

 名前を呼ばれると情が移ってしまう、やはり教えなくて正解だと唯は確信する。

 案の定葉山は最中に「名前くらい教えて下さい、気持ちの持って行き場が無い」と請い、しかし唯は「好きな名前で呼んだら?」と突き放す。

「……」

 好きな女優の名、好きなキャラクターの名、昔好きだった同級生の名?

 葉山は血が上った頭で思考を巡らせるも、何と呼ぼうがしっくり来ないし、適当に思いつきもしなかった。

「……ねぇ、偽名でもいいから、呼び方決めて下さい…すがる先が欲しいんです…」 

 頭上にはさっき出会ったばかりの年上のお姉さん、名前も教えてくれない意地悪でエッチなお姉さん。

 温かい肉ひだ、締め付ける心地よい圧迫感、先端のイイところに何か当たる感触、味わったことのない「快感」と呼ぶには物足らないほどの高揚感に悶える。

「かわいい、」

 葉山は荒い息遣いの唯を見上げては目を閉じ、直視もできないけど脳裏に焼き付けたくてまた目を開ける。

 前後から縦運動に変わり、葉山が一層喘ぎだした時、唯がその目を見つめて言葉を落とした。

「ユイ」

「へっ?」

「ユイや、そう呼んで、龍ちゃん」

 葉山の艶に当てられたのか、彼女は遂に名を教え…

「ユイ、さん」

これが偽名でも渾名でも、虚像かもしれないがどうでも良い、葉山は下唇をぎっと噛み、せきが切れたように賜った名を紡ぐ。

「……ユイ、さん…、ユイさんっ」

葉山は犯されているが如く歯を食いしばり、甘美な遊戯の終わりを唯に知らせた。

 時間にすると挿入は短かったが前戯も含めればそこそこ楽しめる内容だった。

 熱い滾りをスキン越しに感じ、唯はこの青年の大人への一歩の助けになれたことを嬉しく思った。

 しかし腰を浮かせてするんと葉山を抜き、先ほど同様にティッシュでお掃除をしたらサッとショーツを履いてしまう。

 そして葉山のボクサーを拾い上げお疲れモードのモノの上にかけると、

「シャワーしてくるわ」

と言い残してスマートフォンだけ持って風呂場へ向かってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。

雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。 ——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない) ※完結直後のものです。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました

utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。 がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

処理中です...