枯れかけのサキュバス

12月・諦めのサキュバス

62

　食事の後は少し夜景を見て、唯の両親を滞在中の部屋まで送ってお開きとなった。

「信じられへん…お前…ほんまに騙し討ちが過ぎるわ」

自分たちが宿泊する部屋に戻り、アクセサリーを外しながら唯がぼやく。

「すみません、先に言っちゃうと緊張しちゃうと思って。ふふっ」

「ふふっ、とちゃうわボケェ…あ、前に電話が通じひんかった時、あれ新幹線やな⁉︎」

「ピンポーン」

　ようやく合点がいった、浮気などではないと思っていたが確証が取れてユイは少しホッとした。

「は…言えよ…引越し以外にもちょこちょこ出かけてたやろ、あれは？」

「兄の人探しを手伝ってまして…また落ち着いて話しますよ…でも成功報酬は貰ったので、ここの宿泊費の足しにします」

「はぁ…？……にしても結婚て…早い…」

気取ったワンピースの脇のファスナーを下ろし、大きく息をして冷や汗が乾いた後の体から剥ぎ取った。

「そんなにすぐの話じゃないですよ、ゆくゆくは、って。僕たちは去年付き合いを始めた時点で婚約してますから、自然な流れですよ」

「脅迫からの口約束やん…まぁ、そん時は改めて……プロポーズしてや、龍ちゃん」

口約束の婚約、葉山は強引に取り付けたものの、100パーセント執行できるとは考えていなかった。

　しかしそれが現実味を帯びて、一緒に暮らすところまで話が進んでいる。

　親への紹介、根回し、トントン拍子に事が運び過ぎて怖いくらいだ。

「そうですね、すぐしましょう」

「は」

　ぼんやりとした約束から正式な契約へ、葉山は下着とパンストという間抜けな姿になった唯をベッドへ組み敷いた。


・


　二人が３年ぶりに交わった７月、淫行を誤魔化すために「婚約者」を一時的に名乗ったことはあったが、なんら拘束力も無く意識する物でもなかった。

「ユイさん、ボクと、結婚しますよね」

　ラブホテルの物とは少し違う、白を基調とした休みやすさを重視したベッド周り。

　ここにはうるさいインフォメーションのモニターもBGMも存在しない。

　しかしベッドの上の二人はしている事はいつもと同じ、唯は猫のようにうつ伏せで尻を高く上げ、葉山は痛切な表情で想いと欲をぶつけていた。


「ア、もう…抜…いっ、て…ぇ♡」

パンストの股部分を破いてずらし挿入、唯はいっそ脱がして欲しいと恥ずかしさを堪える。

　ブラジャーを纏ったままの胸はシーツとの間で潰れて揺れもせず、もうかれこれ30分はその状態で湯気が立ちそうなほどに蒸れていた。

「はいと言うまで、やめません…ロングプレイ用の、サプリが、効いてます…ふふ、」

「なん…ちぃふのっ…かっ…は♡もぉッ…おがじぐっ、なルっ…♡あー、ハー…、」

それは嘉島かしまチーフとの闇取引で手に入れた慈養強壮のサプリメント、ただでさえ若く勢いのある葉山青年は股間が爆発する様な滾りを感じている。