枯れかけのサキュバス

茜琉ぴーたん

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12月・諦めのサキュバス

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「(マジでそそる…やっぱ全裸よりいいな…)」

 ふわふわのチュールに包まれた豊かな乳房に口を付け、ひとつ、ふたつ、と葉山はキスマークを刻む。

「僕専属のユイちゃん、今日の1回目は口でイカせてから、正常位でシようと思てんけど、どう?」

「…うちに聞かれても…」

おそらく『嬢のユイちゃんと素の葉山』なる設定なのだろう、普段よりもっとくだけた関西なまりに唯はぐっときてしまう。

「え?足らへん?どういうプランがええ?」

「き、希望とかはあ…らしまへん、好きに…しはって…」

押されれば弱い唯は、覆い被さられて目線を外し、ステレオタイプな京女を演じてみる。

「ええな…高級ソープ嬢♡何回くらいシよか?」

「………分からしまへん…そんなに勃たへんやろ…」

「あれ心外だな…チーフに買って貰ったサプリ飲みましょうか。取り引きしたんですよ」

唯は先月嘉島かしま宅で鍋をした際にご愛用?のサプリを既に目にしている。

 いわゆる男性の元気に効くやつだ。

「……アホなん?自分ら…何をあげてん?」

新庄しんじょうさんの、欲しいものを聞き出して教えてあげたんですよ」

話し方は一時中断、この辺りの柔軟さが二人が築いてきたコンビネーションの賜物たまものなのである。

「…男らしないな…お前にヒナコが本音言うか?うちに聞けばええのにな」

「ユイさんは演技ヘタですからね、ふふ」

「むぅ…何やってん、ヒナコの欲しいもの」

「正確には、好きなデザインを聞き出したんですよ。ネックレスのね」

「はぁー…なるほどな…やるね」

 男が選ぶネックレスは地雷が多い。

 それを自覚してるのか当人に選ばせる辺りさすがの年の功だと感心する。

 何より、煙草の煙の件でギスギスしていた葉山と嘉島がそんな同盟を組む程に関係改善していることが唯は嬉しかった。

「みんな、幸せなクリスマスになれば良いですね…ユイさん、年末は刈田さんのお宅に居候ですけど、クリスマス…26日ですけど空けておいてもらえますか?」

「うん?ええよ…わざわざ…」

「もう、ホテル予約してるんです…神戸のホテル…」

「はぁ、すごいな…」

「ふふ…そろそろシましょうか。ユイちゃん、下…脱ごか?………うん、脚……開いて、そう」

閑話休題、葉山は自分の手でわざわざ脱がせ、シて欲しい形に脚を置かせる。

 唯は両脚を少しだけ開いて、彼を受け入れた。

「その角度がええんや?」

「……ハイ」

口淫とてチームプレー、時間をかけると双方プレッシャーがかかるものである。

 イキそうなのか、まだなのか、これがスパートなのか、そうでないのか。

 「いま何パーセント?」と尋ねる方法も試したことはあるが、その値から頂点まで掛かる時間は毎回一定ではない。

 不要な心労を無くすため二人で育ててきた数種類の体位から、プランに沿った今夜は「ユイがイキやすい体勢」から始めた。

 葉山の責めはまだ自身が思う3割くらいであるというのに、今夜の唯の感じやすさは過去最速かもしれない。

「うア♡ンっ…あ…あー…♡龍ちゃん…りゅう、チゃん…♡」

惜しげもなく漏れる自分の名、ぴくぴくと震える太もも、足の付け根に指を沿わせると「止めて」と言わんばかりに唯の両手に絡め取られる。

 そのまま恋人繋ぎをするも良し、手首を拘束するも良し、だが今夜はその手を取って自分のこめかみを触らせた。

 顎と舌が動く度にそこは動くし、そして自分の股から男が生えているような一体感。

 「させている」という支配感、唯の興奮がいま一線を越えようとしている。


 葉山の耳を指がかすめ、その手は男の大きな手を探す。

 鼠蹊部そけいぶへ置かれたその甲に爪を立て、息を荒げ、頭は右に左に落ち着かない。

「あ、ァ…、りゅ、うちゃ…イク、もぉ…あ、あ、」

葉山の脚の間に挟まれた唯の両脚はぴったり閉じられて、片足ずつ交互にもじもじと張ったり緩んだりを繰り返す。


 やがて両脚がピンと張り、

「あ♡だめ、あ、ア、~~~っあ♡は、ンッやめっ、ア♡離し、でっ、や」

弓反りからの屈曲、葉山の手の甲には爪がグイグイと押し込まれていく。

「あ…アー…しつっこい…ハ…あ♡」

いよいよ手の痛みに耐えられなくなり、葉山は唯のソコから口を離した。


 ハロウィンの後のホテルでも感じた事だが、唯は服装や場所、いわゆるシチュエーションに影響されやすいのではないか、と葉山は考える。

 ロリータを着せればしおらしく、化粧を落とせば大人しく、今夜のようにベビードールを着せてやればそれらしく。

 そういえば仕事中の武装だって、理想の自分を作り上げる為の鎧だったのだ。

 化粧、服装、言葉、なりたい自分を自分でプロデュースして、結果ストレスを溜めるという残念さではあったが。

「なぁ、今度…可愛い系の化粧して?楽しめそうや」

「………何が?」

「いや、こっちの話♡」

ふぅと息を悩ましげに吐いて、葉山がスキンを纏う。
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