枯れかけのサキュバス

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
12 / 100
7月・枯れかけのサキュバス

12

しおりを挟む

「ユイさんは僕と会ってるときは生理周期…バイオリズムにのっとって行動してたでしょう?分かりやすかったんですよ。僕のイキ顔だけ見て帰る日有ったけどあれは排卵日か生理日、でしょ?1回記録しておくと、あとは微調整ですよ、毎月多少の誤差はあるでしょうし」

「えぇ…」

「……そうやって気持ち悪がりますけど、バイオリズムを把握してるとお互い良いことあるんですよ?ユイさんの生理中は体をいたわってあげられますし、お出かけとか、情緒じょうちょにも配慮してあげられます。あと避妊も……僕はまだユイさんを妊娠させたくはないですから、危険日には手を出しません…あ…訂正します、挿入はしません」

「はぁ…なんや、うち麻痺してるんかな。有り難いと思てしもたわ…」

「素直で良いじゃないですか♡」

もにもにと持ち上げては胸をいじくり回し、ぼちぼちと言うところにきたのか、葉山はポケットのスキンの箱を手に取った。

 しかしすぐにシーツに置き、宮に置かれた自身のネクタイにこっそり手を伸ばす。

「ユイさん…右手、ここ、肩の上に置けます?」

「うん?こうか……あ?」

 唯が自身の肩に握り拳を置いたと同時、葉山はその細い手首にネクタイを結んだ。

「なに、」

 結ぶと言ってもひばり結び、2つ折りにした紐の輪に両端を通す、ケータイストラップの取り付けなどで使われる簡易的なものだ。

 しかしながら当然、いきなり拘束され唯は驚き怒りだした。

「おい!なんや、こういう趣味まで始めたか!?」

「いえ、それもいいですけど…左手も挙げてもらえます?」

「え、挙げたら縛るんやろ?」

「はい」

「挙げるか、ぼけぇ!ほどけ、アホォ!」

唯は尊厳そんげんの危機に口汚く抵抗するが、手慣れた葉山は意に介さない。

「口悪いなぁ…いいこと教えてあげようかと思って」

「なによ、ええ事って」

「胸のつかえが取れるような、いい情報です」


 嫌な予感はする、しかし良い情報らしい。

「…なあ、縛った後どうすんの」

「解きますよ。僕の情報を聞いたら、ユイさんはきっと怒っちゃうから。怒りが冷めたら解いてあげます」

「?なん?うちにとってええ事なんやろ?でも怒んの??」

 取り引きのようで対等ではない、あまりに情報の少ない危険な提案であるが。

「はい。聞くかどうかはお任せします」

 唯は少し考え、

「……痛くせんとってや」

とスッと左手も挙げ、頭の上でてのひらを合わせ拳を握る。

「…はい」

葉山はネクタイの端を左手に回しかけ、右手の結びにも通し、適当にくるくると巻いて通して、両手をガチガチにくっつけ固結びで止めた。

 そして唯の正面へ座り直して端にあった夏布団をお腹から下にふんわりとかけてやり、布団の上から足首辺りを撫で回す。

「…ほんで?なんや」

「…ユイさん、」

「うん?」

青少年愛護条例せいしょうねんあいごじょうれいの違反は、」

「うん」

「時効があります」

 俯いたままの葉山はニィと笑い、ここで唯の眉間が険しくなった。

「……何年よ」

「3年です」

やっと顔を上げた葉山は唯の反応を見てソワソワとして、

「す………過ぎてるやんか!おい」

と彼女が怒ればぷはとついに吹き出す。

「はは、般若はんにゃみたいだな、そうなんですよ。ユイさんを罪には問えないんです」

「ヘラヘラしてんな!解け!」

唯は脚をバタつかせるが、布団ごと葉山が抑えているので立ても蹴れもしない。

「でも、淫行した事実はありますからね、証拠も。僕が告発すれば、社会的に死にますよ。まぁ、最後まで引っ張るつもりやったんですけど、余裕が無くなってきたんで、先に言わせてもらいました。少し流れを繰り上げて、もう挿れたくて」

ニッコリと微笑み、葉山はスキンの箱を今度こそカサカサと開封する。

「いや、ニッコリちゃう…お前、人のこと軽いだ淫行だって…社会的に死ぬとか、うちの事ほんまに好きか……!」

スキンを1枚持って、葉山の目線が顔に戻ってくると、子宮の出口辺りがきゅうっとなった。

「好きです、大好きですよ。体から始まった関係でも、僕はユイさんの性格も考え方も仕事の姿勢も全部好きなんです。お叱りは、解いた後で聞きます。殴っても構いません。でも同じ殴られるなら、抱いておきたいです」

 葉山は唯の肩と背中を抱いて寝かせ、

「いいですよ、このまま倒れて。腕は頭の上が楽でしょう」

そう言いながら、布団を剥がしてショーツに手を掛けた。

「お前、好きな女を騙し討ちしようとしたり脅迫したり、腹黒いな。うちにそこまでする価値あらへん…」

自分からスルスルと脚を抜き、唯はそれを足元にぽてっと落とす。

「ご謙遜けんそんを。一筋縄ひとすじなわでいかない相手でしょ?なんでもしますよ、失礼しますね…」

葉山の準備は万端のようだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?

春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。 しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。 美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……? 2021.08.13

処理中です...