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7月・枯れかけのサキュバス

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「呼び捨てでもいいですよ、4つも年下ですし」

「いや、慣れてるからこのままで」

「ふふ、はい」

 ワイシャツのボタンを下1つだけ残して外し、キャミソールの上半身が露わになった。

「アンバランスやろ、今Fカップあんねん」

 小さな体に大きな膨らみ、確かにスタイルとしては良くはないかもしれないが抱き心地の良さそうな女性の体である。

「綺麗ですよ」

「おおきに」

 唯は自分でベルトを外したが、ボタンに手を掛けたところを葉山が制して、

「今日は、僕に任せてくれませんか?僕を先に」

と唯の手を首元まで誘導した。

「あぁ、うん」

 ネクタイを緩めてほどいた唯は、するっと抜いたネクタイをどうするか迷い、丸めてベッドのみやへ置く。

「ふふ」

「なん?」

「そういうところが好きなんです」

「うん?」

 両手でボタンを外してワイシャツを脱がし、葉山が受け取って自分の足元へ落とす。

 歩いたからだろうか、肌着の首から胸まで汗が染みていた。

「暑ないか?エアコンつけてええよ」

「汗かきたいんです」

「熱中症なったら困る、つけよ」

 しゃがみ込み、ベッドの宮のポケットからエアコンのリモコンを取って電源を入れ、

「28度の省エネやな。あ、リビングのエアコン、切っ…て…」

そう言って振り返った唯の目線が上へつつーと動く。

 青年は既に肌着も脱ぎ去ってベッドに手足をつき、獲物に這い寄るライオンの様相で彼女を見下ろしていた。

「ぁ……」

 顔に影がかかり、この男はこんなに大きかっただろうか、と捕食される動物のような危機感を覚える。

「ユイさん、」

成獣は唯が抱え込んだ脚を引きベッドの中心まで輸送して、半身はベッドに付き寝かしつけの様に顔を見つめた。

「………」

 しかし唯が予想外にたじろぎもせず葉山の顔をまじまじと見つめるものだから、

「?なんか付いてます?」

と彼もキョトンとなってしまう。

「いや、雰囲気、顔?変わったな…思て」

「そうですか?背は少し伸びましたけど」

「…大人になってんなぁ。売り場でも堂々としてて立派やで」

 そう微笑めば葉山はまた下唇を噛んで…それでも涙腺を締めて優位を譲ろうとはしなかった。

「ふー、…ユイさん、まだ照れてます?あんなにシた仲なのに」

「うん。慣れてるけど、緊張はすんねん。ビッチでも久々やと恥じらいはあんのよ。せめて風呂入りたいとか、ムダ毛の手入れとかな。下着合うてるか確認もしたかったわ」

「ほー、なら見てみましょう。何色だと思います?」 

 葉山はベルトだけ外れたスラックスのフックを外して、ファスナーを下ろし卑猥なクイズを出す。

「…ピンクやったかな?」

「残念、水色」

「そうかー、ブラと合うてへんな」

答え合わせをすれば彼女は万歳の姿勢から片手を動かし、あちゃーとばかりに目元を隠した。

「ねぇ、前から思うてたんですけど、このスラックス、チノパンとかもっと分厚い奴にできませんか?下着のラインが浮きやすくて、ハラハラする…ん、」

裾を引っ張りスラックスを脱がせると、唯がさり気なく腰を浮かせたので葉山はふふっ、と笑う。

「んー、綿のズボンの洗い替えで時々やで、下着は目立たんの履いてるつもりやけど」

「僕くらいになると、薄目で見えるんですよ」

「お前にしか見えへんならええやないか」

「ふむ…今度買いに行きましょう………あ、だめだ、」

 葉山は唯の背中に手を差し込みブラジャーを外そうと試みるも、早い段階で頓挫とんざした。

「痛いやろ、手」

「そうですね…アドレナリン切れたのかな、はは。ちょっと起こしますね、よいしょ!」

勢いをつけて唯の上体を起こして背中側に回り込み、肩越しの胸を見下ろすと、彼の指針は変更されたようだった。

 キャミソールの上から胸をふにふにと触り出すと、肌着と下着を介しても手に伝わる柔らかさ、唯の腰には硬いものが触れる。

「このままでもいいですね…生で触ると暴発しそう。ユイさん、おっぱい張ってますね、じきに生理前でしょう?」

「は」

 さすがの唯も、この発言にはギョッとする。

「は、変態か!?なんで知ってんねん!」

「いえ、お手洗いの回数とか、顔色とかで分かりますよ」

「きっしょ…」

 唯の下まぶたがひくひくと痙攣けいれんしているが、構わず葉山は持論を展開する。
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