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7月・枯れかけのサキュバス
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しおりを挟む「即答は悲しいなぁ。…誰かに相談してみましょか、嘉島チーフなんてどうですか?当時のメールも残してます」
「…………」
唯は絶句する…相談と言いながらも、この男は過去の蛮行を「バラす」と脅しているのだ。
足の力が抜け、ストンと尻が床に落ちる。
「おっと、」
葉山は倒れないよう支えながら、
「ね、ユイさん、淫行条例はね、親の許可があったり、結婚を前提とした真摯な交際なら、罪にならないんですよ。僕ら、昔から今でも継続して愛し合ってる、婚約してる、そういうことにしましょ?」
と提案した。
「いや、ちゃうかったやん!セフレやて」
「ユイさん、認めてくれれば、罪にはならない。誰にも言いません」
真っ直ぐに、唯の心の動揺を見透かすように葉山は諭すも、
「いや、認めて今更何になんの?お前を口封じした方が早くない?」
と、動揺はしているが武力行使も辞さない覚悟で唯は睨み返す。
「怖いな!……ユイさん……継続して付き合ってる、ゆくゆくは結婚する意思がある、という実績を作るんです。それなら僕は口外しません」
「はあ…?なに?付き合うってこと?」
「そこまで難しい話じゃないでしょ?…昔みたいに、僕で性欲処理して下さいって言ってるんです。僕からも誘いますけど。ね?罰。謹慎。解雇。ユイさん、会社の人にもバレないようにします。不特定多数の男と遊ぶより安心でしょう、ね?罰、謹慎、周囲の目、」
葉山はじりじりと具体的なワードで圧をかけて揺さぶり、
「いや、もう遊ぶ気はあれへんけど…」
追い詰められた唯は目を瞑り、考えた。
殴ったところで逃げられそうにないし、警察のお世話にはなりたくない。
逆上されて痛い目に遭うのも嫌だし、こちらに好意があるのなら甘んじた方が安全か。
この性悪と結婚なんてする気は今は無いが、次の転勤で上手くいけば逃げられる気がした。
「……わかっ…た…」
唯は大変な脅迫を受けることになったが自身の過去を隠蔽することに成功、そもそもが完全に身から出たサビだし、勝ち目は無い。
「じゃあ、改めて。あの時の僕らは、どんな交際でしたか?」
「…真摯な交際でしたぁ」
「当時16歳の子に20歳で手を付けたわけですけど、結婚する意思はあったんですね?今でも継続してお付き合いしてるんですもんね?」
「……………へい…」
「ありがとうございます、言質取りましたからね、僕ら婚約者ですよ」
そこまで言うと葉山はにっこりといやらしく笑い、
「そしたら、ユイさん。やる事があります」
と優しくポンポンと肩を叩くので、唯は体を少し強張らせる。
「……なんや」
「お泊まりセットを買いに行きましょう、そこのディスカウントショップまで。あとお腹も空いたので何か買いましょう」
「は?」
唯はいよいよ抱かれると構えていたのに拍子抜けした。
腐ってもビッチ、これからセックスするという状況に胎の奥底が熱くなってきていたのだ。
「下着と、歯ブラシとか。近いから歩きましょう、ほら」
「は…泊まんの?」
「はい。いいでしょ?明日休みですし、僕らフィアンセ、丸々一緒におりましょう♡」
すっかり上機嫌の葉山はいそいそと身嗜みを整え始める。
「…嫌やって言うたら?」
「拒否権はありませんよ、淫行コーナー長♡」
とびきりのスマイルを投げた青年に、
「………お前、いつか殺すからな」
と恐い台詞を吐き、唯は彼の右手をぎゅうと握って玄関へ向かった。
「あ♡痛い、」
葉山はそれでもふてぶてしく笑みを浮かべ、暫定婚約者を追いかける。
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