64 / 100
12月・諦めのサキュバス
58
しおりを挟むそれから10日後の12月も半ば。
忘年会の帰りに葉山は唯をホテルに誘い、彼女の誕生会を催した。
実際の誕生日は9日前、家具屋に行った翌日つまり危険日週。
ほんのり険悪だったので彼は身の危険を感じ、休日が揃う今夜まで先送りにしていたのだ。
二人の新居は年明けから住めるのだが、長期の正月休みなど無い職種なので新年セールが明けてから少しずつ荷物を移動させるよう計画している。
年末には唯は社宅を引き払う予定で、小さめの家財道具を同僚・刈田美月のマンションに置かせてもらい、年末年始も厄介になることにした。
葉山は休日と空き時間を自宅と唯宅の荷造りに費やし、年末セールの忙しさもあってお泊まりは中止している。
険悪ムードのきっかけになった「お出かけ」の内容は未だ不明なままだが、自分に不利益なことではないのだろうと唯はこの件について忘れることにした。
なので10日ぶりの体の触れ合いに唯の胎は疼き、どうやって抱いてもらえるのか、昼間からそればかり考えていた。
二人時間差でささっとシャワーを使い、ローブ姿の唯は持ち込んだ炭酸飲料を口に含んだ。
後から出てきた葉山も同じ物を回し飲みし、備え付けの冷蔵庫へ一旦収める。
「ユイさん、」
葉山が注意をひき、荷物をゴソゴソと漁ってとある物を取り出した。
「ディナーとかしたかったんですけど、忘年会でお腹いっぱいですし…ケーキは改めて買いましょう。……これ、誕生日プレゼントです」
唯は白地にピンクでレース模様が描いてある、可愛らしいビニールのショッパーを受け取る。
「おおきに……開けてええの?」
袋から出すと、セロハンでラッピングされた薄ピンクの布、おそらく衣類だろうか。
「?なん………龍ちゃん!」
開封すると更に小さい布切れが唯の足元にぽてっと落ち、それを拾い上げた途端に彼女は珍しく顔色を変えて叫んだ。
小さい布切れ…著しく布面積の少ないTバックを持った手で葉山に掴みかかる。
「落ち着いて、ユイさん!それは履かなくてもイイから!その上がメインだから!」
葉山は落とされた包みを開き、その中の大部分を占めるピンクの塊を出して唯の前に広げると、
「……かわいい」
彼女は普段あまり見せない顔で目を輝かせた。
それはふわふわのベビードールで、共布のショートパンツとセットになっていた。
可愛い下着を手に唯は心なしか内股で膝を合わせて喜ぶ。
「でしょう?こっちのショートパンツなら寝間着でもいけるでしょう、着て見せて下さい」
「…どーしよっかなー」
チラッと葉山を見上げ、焦らしてみせるも口元はゆるゆるで締まりがなかった。
「着てみたいくせに、照れちゃってもう」、そんなことを言えば彼女は自分の前では着て見せてくれないだろう。
こうなることは充分に想定内、葉山は唯の足元に跪き、ふくらはぎから膝の裏につつと指を這わせて
「お願いします、着てください」
と上目遣いで仰いだ。
目を合わせてローブへ手を入れ、太もも、尻へとローブを捲りながら指を這わせ…立ち上がって腰の紐を解き、唯を丸裸にしてにっこりと笑む。
そしてベビードールを上から被せ、
「まぁ一応これも…」
とTバックも足先から通してやった。
ベビードールはシフォン生地の上にチュールレースが重なり全体が透け、尻がギリギリ隠れるだけの長さ、そして胸元が大きく開いている。
下には同じ素材のショートパンツをすぐさま履かせた。
「わぁ…ふわふわやん」
唯は上機嫌で
「かわいい?」
と、ベッドの上に横坐りになる。
「もちろん…」
葉山は艶っぽい姿に息をのみ、しかし意外な要求をした。
「ユイさん…こうやって、こう、手」
「こう?」
唯が言われるままに手で目を隠すと、葉山が裏声で
「本日の出勤、ユイちゃん(27)Fカップ、得意な体位は騎グエッ」
と笑えない冗談を吐く。
「おどれ、ええ加減にせえよ…」
もちろんそんな葉山の襟首を掴み、唯は殺し屋さながらの形相で凄んだ。
「ごめんなさい、ごめんなさい、風俗の広告みたいだったから。はは、エロい…♡」
「褒めてんのか?それ」
「褒めてる…こんな店あったら僕絶対毎日通っちゃう♡」
「…なんぼ払う?90分本番ありや」
唯はうなじを見せるように髪を持ち上げ、離すと豊かな黒髪が肩を打つ。
「んー、相場が分からないですけど、」
葉山はベッドの上を獣の様に這い寄り、
「僕のものになるなら、生涯年収あげてもいい」
と、嬢の手を取って甲へキスをした。
「ん…龍ちゃん、分割で頂戴ね♡一生かけて」
小首を傾げて唯がウインクを投げ、葉山がその首元にかぶり付いて今夜も営みが始まる。
しかし服装がそうさせるのか、唯はしおらしい。
そして着衣セックスに目がない葉山は彼女の格好と態度に自分史上最大級に滾るが、あくまで紳士的にと歯を食い縛り暴走を堪えた。
もうじきクリスマス、予定通り行けば唯の生理が終わった頃だろう。
その時もこれを着てもらおう…とまだ先の事を考えながら葉山はじりじりと彼女を解していく。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ミックスド★バス~湯けむりマッサージは至福のとき
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
温子の疲れを癒そうと、水川が温泉旅行を提案。温泉地での水川からのマッサージに、温子は身も心も蕩けて……❤︎
ミックスド★バスの第4弾です。
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。
——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない)
※完結直後のものです。
ミックスド★バス~ホテルのお風呂は非日常で
taki
恋愛
【R18】入浴剤開発者の温子と営業部の水川は晴れて恋人に!大人な関係に進もうとするが、水川の優しくねっとりした愛撫に温子は……?
えっちめシーンは❤︎マークです。
ミックスド★バスの第3弾です。
リゾートホテル、ビジネスホテル、シティホテルのホテル3部作です。
やさしい幼馴染は豹変する。
春密まつり
恋愛
マンションの隣の部屋の喘ぎ声に悩まされている紗江。
そのせいで転職1日目なのに眠くてたまらない。
なんとか遅刻せず会社に着いて挨拶を済ませると、なんと昔大好きだった幼馴染と再会した。
けれど、王子様みたいだった彼は昔の彼とは違っていてーー
▼全6話
▼ムーンライト、pixiv、エブリスタにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる