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11月・嫉心のサキュバス
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しおりを挟む「終わり…ですよね、なんの罰か分かんないですけど…」
唯は洗面器に張った湯で脱毛器を洗い、シャワーで葉山の体に残った泡と毛を流してやる。
「よし、したらほら、座って。まだ終わってへんよ」
「は?もう無いでしょ、頭は嫌ですよ」
「あるやん、濃ゆいとこ」
「は?僕、髭はあんま…り…………」
途中まで言いかけて、下瞼が動いて葉山の顔色が変わった。
「わ、嫌や、嫌やぁっ!ユイさん、ほんま、何でもしますからっ、ココだけはっ」
「座れて。龍ちゃん、罰ゲームってわけやないねんけどな、ちょっと気に障る事があってん」
「なんですか…ここまでしなきゃいけない事ですか?」
「んー、浮気防止というかー」
「なに、この前乱暴にした事まだ根に持ってるんですか?すみませんって、僕は浮気なんてしませんよ!」
「座ってって!」
言葉を荒げずに語気だけ強めた唯の迫力に気圧され、葉山はペタンと同じ場所に腰を下ろした。
唯はボディーソープを密集地に垂らし、手でくるくると泡立てていく。
「うあっ、ねぇ、さすがに脱毛じゃないでしょう?死んでまいますよ…」
「うん、さすがにカミソリや。ツルツルにしよな♡」
「はぁ、なんでや……っ…わ……」
ヘソの下から陰部へカミソリを進めると、黒い塊が泡と共に落ちていった。
「…気にしとるわけやないねんけどな、女性客からあんな意見わざわざ貰うてな、おモテになるやんかぁ、葉山くんは」
唯はわざとねっとりとした言い方で、あの怪文書に対する思いを語っていく。
「あのお客様の意見ですか…個人宛の意見はよくあるでしょう、僕に限った事じゃない」
「あんな書かれ方したら、葉山くんと新庄さんがほんまに付き合うてるみたいに思われるやんか。社員以外も読む事務所掲示板に貼られたらさぁ」
「……ユイさん、妬いてるんですか?」
「………そうやけど?」
剃り落とした毛を流したら、もう半分は肌色が見えていた。
みすぼらしい下腹部と俯いた唯の目元を交互に見ながら、葉山はいよいよの抗議を行う。
「うわ…新庄さんに?は、わかってるくせに!僕が何とも思ってないってわかってるくせに!わざわざこんな…罰を与えるほど?いや、妬いてくださるのは嬉しいけどさ、コレはやり過ぎで」
「お前がどうこうやないねん!相手方にそう思われてるんが気に入らんねや!ヒナコかて、彼氏おるからお前なんか眼中にあらへんのは知ってるわ、お前とヒナコがどうにかなるなんて思てへん。しやけど周りにそう思われんのが嫌やねん!事実が無うても、噂になったらあったんと同じや…」
「いや、」
「イチャイチャしとる様に見えるっちゅうのも…うちとは一緒に居っても噂にもならへんのに、ヒナコやったらそう見えるんやから…敵わんな…」
唯はその後は黙って、タマは恐いので残し、ほぼ全ての陰毛を剃り落としてしまった。
シャワーですすいでやると、排水溝の蓋の上を黒い毛玉が覆い隠す。
「できた…ツルツルや、なんかの間違いがあってパンツ脱いでもうても、これなら相手も萎えるやろ」
そう言い捨てると葉山に背を向け、床の角に辿り着いた毛を流していった。
「……間違いはありませんよ。ユイさん、ねぇこっち見て下さい。ユイさんの嫉妬で僕がこうなったのはまぁいいですよ、今更戻りませんし、また伸びますから…こんな可愛い水着姿で股間弄られて、ご褒美みたいな物ですしね。ユイさん、僕は貴女の男ですよ、貴女のオスです。それは絶対ですから。改めて聞きますから答えてください、頷くだけでもいいです、嫉妬でこんなことしたんですね?」
「……」
動きを止めて、唯は縦に首を振る。
白いうなじが綺麗で、少し開いた背中にクロスに渡された肩紐もエロティックだった。
「可愛いなぁ、ユイさん。こんなことしなくても…本当に…こんなことしなくても…口で言ってくれれば良いのに…」
「あれ、凹んでんの?」
「そりゃそうだよ!こんなつるつる…恥ずかしいよ、僕大人なんだから…はぁ、もう変にのぼせちゃった」
葉山はなるべく早くパンツを履きたい、その思いで素早く体を洗い、湯船には浸からなかった。
「その水着、本当に可愛いですよ。それ着て今度シたいくらいです。先にあがります」
少し笑い葉山はそそくさと脱衣所へ出て行き、置き去りにされた唯は浴槽で水着を脱いでぷはーと息を吐く。
やってしまったと少しは自責の念があるが、これで嫌われるようならそれまでの仲、とやけっぱちになっている部分も途中からあった。
そしてどこまで酷い事をすれば葉山が怒るのか試したい気持ちもあったのだ。
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