上 下
51 / 100
11月・嫉心のサキュバス

49

しおりを挟む

「終わり…ですよね、なんの罰か分かんないですけど…」

 唯は洗面器に張った湯で脱毛器を洗い、シャワーで葉山の体に残った泡と毛を流してやる。

「よし、したらほら、座って。まだ終わってへんよ」

「は?もう無いでしょ、頭は嫌ですよ」

「あるやん、濃ゆいとこ」

「は?僕、髭はあんま…り…………」

途中まで言いかけて、下瞼が動いて葉山の顔色が変わった。

「わ、嫌や、嫌やぁっ!ユイさん、ほんま、何でもしますからっ、ココだけはっ」

「座れて。龍ちゃん、罰ゲームってわけやないねんけどな、ちょっと気に障る事があってん」

「なんですか…ここまでしなきゃいけない事ですか?」

「んー、浮気防止というかー」

「なに、この前乱暴にした事まだ根に持ってるんですか?すみませんって、僕は浮気なんてしませんよ!」

「座ってって!」

 言葉を荒げずに語気だけ強めた唯の迫力に気圧され、葉山はペタンと同じ場所に腰を下ろした。


 唯はボディーソープを密集地に垂らし、手でくるくると泡立てていく。

「うあっ、ねぇ、さすがに脱毛じゃないでしょう?死んでまいますよ…」

「うん、さすがにカミソリや。ツルツルにしよな♡」

「はぁ、なんでや……っ…わ……」

ヘソの下から陰部へカミソリを進めると、黒い塊が泡と共に落ちていった。

「…気にしとるわけやないねんけどな、女性客からあんな意見わざわざ貰うてな、おモテになるやんかぁ、葉山くんは」

 唯はわざとねっとりとした言い方で、あの怪文書に対する思いを語っていく。

「あのお客様の意見ですか…個人宛の意見はよくあるでしょう、僕に限った事じゃない」

「あんな書かれ方したら、葉山くんと新庄しんじょうさんがほんまに付き合うてるみたいに思われるやんか。社員以外も読む事務所掲示板に貼られたらさぁ」

「……ユイさん、妬いてるんですか?」

「………そうやけど?」

剃り落とした毛を流したら、もう半分は肌色が見えていた。

 みすぼらしい下腹部と俯いた唯の目元を交互に見ながら、葉山はいよいよの抗議を行う。

「うわ…新庄さんに?は、わかってるくせに!僕が何とも思ってないってわかってるくせに!わざわざこんな…罰を与えるほど?いや、妬いてくださるのは嬉しいけどさ、コレはやり過ぎで」

「お前がどうこうやないねん!相手方にそう思われてるんが気に入らんねや!ヒナコかて、彼氏おるからお前なんか眼中にあらへんのは知ってるわ、お前とヒナコがどうにかなるなんて思てへん。しやけど周りにそう思われんのが嫌やねん!事実が無うても、噂になったらあったんと同じや…」

「いや、」

「イチャイチャしとる様に見えるっちゅうのも…うちとは一緒に居っても噂にもならへんのに、ヒナコやったらそう見えるんやから…敵わんな…」


 唯はその後は黙って、タマは恐いので残し、ほぼ全ての陰毛を剃り落としてしまった。
 
 シャワーですすいでやると、排水溝の蓋の上を黒い毛玉が覆い隠す。

「できた…ツルツルや、なんかの間違いがあってパンツ脱いでもうても、これなら相手も萎えるやろ」

そう言い捨てると葉山に背を向け、床の角に辿り着いた毛を流していった。

「……間違いはありませんよ。ユイさん、ねぇこっち見て下さい。ユイさんの嫉妬で僕がこうなったのはまぁいいですよ、今更戻りませんし、また伸びますから…こんな可愛い水着姿で股間弄られて、ご褒美みたいな物ですしね。ユイさん、僕は貴女の男ですよ、貴女のオスです。それは絶対ですから。改めて聞きますから答えてください、頷くだけでもいいです、嫉妬でこんなことしたんですね?」

「……」

動きを止めて、唯は縦に首を振る。

 白いうなじが綺麗で、少し開いた背中にクロスに渡された肩紐もエロティックだった。

「可愛いなぁ、ユイさん。こんなことしなくても…本当に…こんなことしなくても…口で言ってくれれば良いのに…」

「あれ、へこんでんの?」

「そりゃそうだよ!こんなつるつる…恥ずかしいよ、僕大人なんだから…はぁ、もう変にのぼせちゃった」

葉山はなるべく早くパンツを履きたい、その思いで素早く体を洗い、湯船には浸からなかった。

「その水着、本当に可愛いですよ。それ着て今度シたいくらいです。先にあがります」

 少し笑い葉山はそそくさと脱衣所へ出て行き、置き去りにされた唯は浴槽で水着を脱いでぷはーと息を吐く。

 やってしまったと少しは自責の念があるが、これで嫌われるようならそれまでの仲、とやけっぱちになっている部分も途中からあった。

 そしてどこまで酷い事をすれば葉山が怒るのか試したい気持ちもあったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

Home, Sweet Home

茜色
恋愛
OL生活7年目の庄野鞠子(しょうのまりこ)は、5つ年上の上司、藤堂達矢(とうどうたつや)に密かにあこがれている。あるアクシデントのせいで自宅マンションに戻れなくなった藤堂のために、鞠子は自分が暮らす一軒家に藤堂を泊まらせ、そのまま期間限定で同居することを提案する。 亡き祖母から受け継いだ古い家での共同生活は、かつて封印したはずの恋心を密かに蘇らせることになり・・・。 ☆ 全19話です。オフィスラブと謳っていますが、オフィスのシーンは少なめです 。「ムーンライトノベルズ」様に投稿済のものを一部改稿しております。

処理中です...