枯れかけのサキュバス

茜琉ぴーたん

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9月・承服のサキュバス

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 結局、実際に食べられたのは合わせて5つで、残りは冷凍なり冷蔵なりで持ち越すこととなる。

 食べる間も食べるのに飽きた後も、葉山はワンコのように唯のそばに侍り、かつて無いほど甘やかして貰うのだった。

「んー……たまに優しゅうしはるから、離れられへん」

膝枕で頭を撫でられながら、葉山が呟く。

「!なんや急になまって」

「独り言でした…親とか同級生にはこんな感じですよ」

 葉山は誰に対しても丁寧語を使い端々には関西訛りが出ているが、しかしこんなにハッキリとお国言葉を使うところは唯は聞いたことが無かったのだ。

「…うちにも、そんなんでええのに。なんや珍しゅうて…ええなぁ」

「そうですか?普通に喋っただけなのに…」

「今度、龍ちゃんの普段の言葉で抱いてよ」

「⁉︎……抱い……うわ、うわ…あ、やばい、」

赤面した顔を隠すように、青年は両手で覆う。

「ユイさん、あ、呼び方は?」

「好きにして」

「……『好きにして』⁉︎ぅゎぁ…」

 一頻ひとしきり悶絶し、葉山は起き上がって

「ユイちゃん、かな…検討しておきます…先にシャワー浴びてきて下さい」

とスマートに仕切り直した。

「…はーい」

 もしも葉山の同級生ならちゃん付けで呼ばれるらしい。

 唯は葉山の学年まで若返ったような気がして内心喜んだ。





「あがったよー」

唯は先に風呂に入り、20分ほどで歯磨きまで済ませてリビングへ戻った。

「したら僕も」

「うん…わ!」

 葉山は唯の尻をすれ違いざまに撫で、パジャマを持って風呂場へ消えていく。

 なんだかんだで毎回彼のリードで抱かれているのだからそんなに特別なこともないと思うのだが、あの喜び様を見ると相当だったのだろう。

 そして寝室に入ると葉山がしたのだろう布団がキレイに整えられていた。

 何か趣向があるのかもしれない、寝て待とうと思っていた唯はリビングへ戻り、持ち帰ったオーディオメーカーの新製品カタログを開く。





 いつもより長かった気がするが、しばらくすると葉山が唯と揃いのキャラクターのパジャマで風呂からあがってきた。

「…あがりました」

「んー…」

「あ、」

葉山が座椅子の後ろからカタログを覗き込み、仕事のトーンで話し出す。

「コーナー長、昨日棚卸してて見つけたんですけど、イヤホンが何本か盗られてました。包みだけ棚の奥に隠してあって。フロア長には報告してますが」

「あー、つまらんことやりよるなぁ…今どき百均でもイヤホン買えんのに…ん、分かった」

「僕この前ハイレゾ、ついに自分用の買ってみたんですけど、やっぱ違いますね」

「ヘッドホン?ええな」

「はい、音が全然ち…、…すみません、仕事の話になっちゃいました」

体に染み付いた反射に葉山は心底恥ずかしそうに、目を逸らして口元を押さえた。

「ナチュラルに呼び名が変わんのがオモロいなぁ」

「僕ももう立派な社畜ですね…まぁ、寝ましょう」

 葉山は戸締りを確認し、唯の手を引いて寝室側のスイッチでリビングを消灯する。
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